JR函館本線は「貨物専用の第三セクター鉄道」へ!?「完全廃止&貨物新幹線で対応」の可能性も!? 函館~長万部の今後へ初会議

「2026年度中に結論を出したい」としています。

北海道新幹線の並行在来線

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JR函館本線の森駅(画像:写真AC)。

 国土交通省は2023年11月29日(水)、北海道新幹線が札幌まで延伸した際に並行在来線となる「JR函館本線 札幌~長万部」をどうしていくかについて、貨物輸送に焦点を当てて話し合いました。

 第1回目となる「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議」。その資料が翌日の30日に公開されました。

 新幹線開業で常に議論されるのが「並行在来線は廃止されるのか、あるいはJRではなくなるのか」ということ。北海道の例では、すでに長万部~余市~小樽は廃止で地元合意となっています。

 今回の会議では、すべての議論の前提として2012年の"北海道新幹線を札幌まで延伸するにあたっての地元との意思確認"である、「並行在来線の北海道旅客鉄道株式会社からの経営分離について(回答)」が再掲されています。その内容は要約すると

・開業時に、函館~小樽はJRから切り離します
・もし第三セクターとして「鉄道存続する場合」には、「北海道が中心になり」、沿線自治体とJRも承継に協力します
・貨物輸送は「関係者と連携して対応」します

の3点。つまり、今後の方向性としては、「JR函館本線としての鉄道存続」はあり得ません。

「貨物は重要!」でも「鉄道貨物輸送」にもいろいろ課題が

 そのうえで、本会議の確認事項では「函館~長万部の今後を話し合う渡島ブロックの協議状況を見ても、旅客輸送は鉄道によらない交通も想定しておく必要がある」と、旅客廃止を示唆。

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JR函館本線を走る貨物列車(画像:写真AC)。

 いっぽうで、貨物輸送は、国が今後強化していこうとしているホットな存在。人手不足や環境問題への対策として「トラックから貨物列車へ」のモーダルシフトをどう進めていくか、活発な取り組みが進められています。国にとって、ないがしろにすることはできず、「我が国の基幹的鉄道ネットワークの一部を構成する路線」と断言しています。

 つまり、新幹線開業後の「JR函館本線 札幌~長万部」は、「貨物列車が走るだけの、しかも第三セクター会社による鉄道」になる可能性が高くなっています。

 ここで課題として、「貨物専用の第三セクター」が設立された事例がないこと。さらに当然の懸念点として「誰がどうやってその路線を維持していくか、お金は?人手は?」というのも大きいです。

 そこでもうひとつの方策として「函館~長万部は完全に廃止して、貨物輸送は新幹線と船で担えばいい」という可能性も挙げられています。ただ、そちらはまだ課題が多く、「貨物新幹線は実現段階に遠い」「北海道と本州の鉄道が完全に分断されてしまう。それは災害や有事への対応に影響があるかもしれない」など多数挙げられています。

 今はまだ「できうる方策をあげて、メリット・デメリット、その将来変化の可能性を吟味していく」という段階。しかし前提として、先述のとおり「函館~長万部」が「JR函館本線」でなくなることになります。

 皆が自由に旅し移動できる「旅客路線」として存続するのかどうか。これは渡島ブロックの地元協議の結論待ちです。「2025年度中」に結論を出せるべく動いているとしています。

 それと並行して、先述のとおり「貨物第三セクターの設立・運営は可能か?」「廃止して貨物新幹線に一本化したほうがいいのでは?」の2択が焦点として浮かび上がってきており、ひとつに決めるためのより具体的な検討が、この「有識者検討会議」の2回目以降で進められていきます。

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