「海外空港のJAL整備士」国内とは働き方が全然違う! かなりマルチ、いや総力戦なその実態

JALが就航する海外空港には、機体を点検・整備するため、現地に常駐する整備士が存在します。国内空港で行う整備作業とは、どのような違いがあるのでしょうか。担当者に聞きました。

「タイヤ交換」をJALチーム総出で

 JALが就航する海外空港には、機体が駐機場に到着してから出発までのあいだに機体を点検・整備するため、現地に常駐する整備士が存在します。国内空港で行う整備作業とは、どのような違いがあるのでしょうか。結論から言うと「かなり違う」といえそうです。

 今回、アメリカ、シアトル・タコマ国際空港で業務にあたるJALの整備士、内村明洋整備長に、その仕事について話を聞いてきました。

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シアトル・タコマ国際空港のJAL機(乗りものニュース編集部撮影)。

 成田~シアトル線は2019年に開設され、1日1往復しています。当初はボーイング787で運航開始となったこの路線ですが、2023年10月時点では担当する旅客機のタイプがボーイング767に変更されています。

 内村さんは「念願の海外勤務なので、苦労よりも楽しみが勝っているところはあります」としたうえ「日本と比べてパーツだったり、人だったり、限られたリソースのなかで作業をし、定時に飛行機が飛ぶようにしなければならないという側面もあります」と話し、次のようなエピソードを紹介してくれました。

「着任後、シアトル線が就航してから初めて、タイヤを交換しなければならない事案が立て続けに発生したことがあります。日本であれば30分くらいで完了できるのですが、整備士を始め支店長などと総出で作業にあたり、シアトル支店総出で力を合わせ、ほぼ定刻に出発させた記憶があります。海外だなと思う反面、結構痺れる場面でしたね」

 同氏が働くシアトル・タコマ空港は、同路線に就航しているボーイングの本拠地、そして767、787が生まれた場所に近接しています。一般的には万が一の際、他の海外空港に比べると“融通が効きそう”ですが、そうでもないようなのです。

機種が変わるのも責任重大、でも「楽しい」とのこと

「確かにシアトル・タコマ空港は、ボーイング社の近くにあるのですが、ボーイング社からパーツを取り寄せるには折返し便出発の時間には間に合わないですし、飛行機のパーツは領収してからじゃないと装備できないなど制約が多いので、万が一の際には他社からお借りするなどの対応が一般的で、日本からパーツを送ってもらった方が早いときすらあります。とはいえ過去には、パイロットさんから『すぐ近くに工場あるでしょ!』と言われたことはありました(笑)」(JAL内村明洋さん)

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JALの内村明洋さん(乗りものニュース編集部撮影)。

 また、先述の通り、現在のシアトル・タコマ国際空港では、787と767の2機種の乗り入れがある状態。内村整備長はともに整備できる資格を持つとはいえ、羽田や成田の格納庫のように、JALの整備士がたくさん作業にあたれる人員はありません。シアトル支店では内村整備長含めわずか2人のJAL整備士が中心となり、JAL便の安全運航を支えているのだとか。そのため、旅客機のタイプが変わると次のような準備が必要なのだそうです。

「767にタイプチェンジにされるにあたり、2~3か月くらい前からパーツを取り寄せたり、現地スタッフに対する教育を行ったりしました。また、システム自体が787と全く異なる飛行機であるため、もういちど767の整備作業の知識をブラッシュアップしたほか、最近起こる頻度の高い整備作業のトレンドを把握するなどの準備をしましたね」

 そのような海外ゆえ、苦労も多そうなJALの整備士ですが、内村さんは「楽しく仕事をさせてもらっています」と話します。

「この1年間、毎日いろんなことが起こるなか、日本では『餅は餅屋』といったように、整備士というプロフェッショナルとして業務をしていましたが、人数が少ないシアトルでは私が客室の準備をすることもあります。空港メンバーが一丸となって飛行機を飛ばしているという実感があるんです。また、お客様との距離も近いのも、海外勤務の魅力ですね」

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