“座席鉄”が選ぶ「JRで快適な特急列車」ベスト5 新幹線の座席超え 前代未聞の巨大空間も

日本全国でJR各社は様々な特急列車を運行しています。特に設備の豪華さをウリにするリゾート特急は、特急列車の華といってもよい存在でしょう。“座席鉄”の筆者が独断で「快適なJR特急ベスト5」を選びます。

新幹線より広い座席も

 全国各地を走るJRの在来線特急列車。定期列車の中で、利用していて快適だと感じる列車には何が挙げられるでしょうか。“座席鉄”の視点でベスト5を、筆者(安藤昌季:乗りものライター)の乗車体験を交え紹介します。

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JR東日本の特急「いなほ」のグリーン車(安藤昌季撮影)。

JR東日本E653系「いなほ」グリーン車

 新潟~秋田間を走る特急「いなほ」には、1+2列「半個室」グリーン車が連結されています。座席と座席が壁で仕切られており、1区画は普通車2席分の1920mm。一般的なグリーン車は1160mmですから、圧倒的なゆとりを感じます。

 デッキ横には簡易的ながらもフリースペースも備え、長時間乗車でも気分転換できるのはありがたいです。

 専有面積は、より上位の設備である新幹線「グランクラス」をも上回ると感じますが、残念なのは座席の座り心地です。背もたれがハイバックシートで高い点は評価できるものの、リクライニングしても座面が連動せずに平坦なため、そのまま体が前に滑ります。フットレストかレッグレストがあれば、滑るのを止められるのですが、装備されていません。

 非常に意欲的な設備だけに、もう少し改良すれば最高の座席になると思います。

JR四国8600系グリーン車

 主に岡山~松山間を走る特急「しおかぜ」に、半室設けられたグリーン席です。新幹線E5系のグリーン座席に類似した座席ですが、座席間隔はそれより広い1170mm。1+2列配置でもあり、非常に快適です。

 座席形状に優れ、枕のある背もたれ、腰部、リクライニングと連動して引っ込む座面、ふくらはぎを支えるレッグレスト、足首を支えるフットレストと、流れるように繋がるつくりは見事です。

 筆者は、一般的なJR特急グリーン車の中は、最高の座席だと考えています。

JR九州787系デラックスグリーン席&グリーン個室

 JR九州の特急列車として各地を走る787系です。特に宮崎空港~博多間を走る「にちりんシーガイア24号」は、快適な787系に6時間以上乗れるため、鉄道ファンからは人気があります。

 787系グリーン車は「グリーン個室」「グリーン席」「デラックスグリーン席」で構成されています。うちグリーン個室は、L字型のソファと回転式リクライニングシートの組み合わせです。定員4人の設備ですが、2人分のグリーン料金を支払えば1~4名で利用できます。広い個室を定員より少ない人数で使うのも、お得感があります。

 また、L字ソファは身長160cmくらいなら横になって寝台のように使えるので、ある意味「どんなグリーン車よりも快適な設備」です。

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JR九州の特急列車に使われる787系のグリーン車(安藤昌季撮影)。

 回転式リクライニングシートは、背もたれが途中から起こせる機構を備えます。座り心地は良好ですが、背もたれと座面のフィッティングがやや悪く、包まれているような座り心地が不足していると感じます。

 デラックスグリーンは1+2列で定員3名の区画です。背もたれが144度も傾き、最大まで倒すと十分に寝られる座席です。快適性においてはJR特急でもトップクラスといえますが、枕がないことと、運転席の運転機器音が聞こえる点は、最上位座席としては少し残念です。

JR東日本E261系プレミアムグリーン席&グリーン個室

 東京~伊豆急下田間を走るJR東日本のリゾート特急「サフィール踊り子」は全車グリーン車が特徴です。1+2列のグリーン席のほかに、4人用、6人用のグリーン個室と、プレミアムグリーン席を設けています。

 グリーン席は、新幹線E5系とほぼ同じ形状です。フットレストが省略されていますが、非常に快適な座席だと思います。

 グリーン個室は、4人用がボックスシート、6人用が窓を向いたソファです。座席はリクライニングしませんが、ソファのクッションが非常に柔らかくて上質であり、グリーン車全体でも最上位の快適性を誇ります。

 特に6人用個室は、かつての寝台特急「トワイライトエクスプレス」スイート個室のようなとてつもない広さであり、インテリアもよいことから、占有時の満足感が大きな設備です。

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JR東日本の特急「サフィール踊り子」の先頭、プレミアムグリーン車(安藤昌季撮影)。

 先頭車両「プレミアムグリーン」は1+1列で、かつ座席背面にシェルが付いていることから気兼ねなくリクライニングできるという、新幹線のグランクラスに近い仕様です。ただしシートピッチがやや短く、リクライニングしてレッグレストを出したときに、足置き場の狭い点がやや残念な印象です。新幹線E7系グランクラスの座席を採用すればよかったのに……と思います。

 運転席後ろは大きく開放されていますが、仕切りがやや高いので前面展望は楽しみにくいです。デッキとスロープを設けて床全体をかさ上げしていれば、防音効果も増すうえに側窓も広く使え、前面展望も楽しめたでしょう。

JR四国キハ185系「伊予灘ものがたり」フィオーレスイート

 最後は“1両まるまる個室”フィオーレスイートを設けたJR四国の観光特急「伊予灘ものがたり」です。松山~伊予大洲・八幡浜間を走ります。

 座席は窓向きのソファです。リクライニングはしませんが、なにより2~8名で車両を専有できる特別感と、圧倒的な広さによる解放感、そして専属アテンダントの乗務と、十分すぎるほどに快適。様々なサービスが提供されるほか、食事も専用メニューがあるなど、特別感をこれでもかと詰め込んだ設備です。

 風景や食事も素晴らしく、JR特急グリーン車の頂点といえましょう。“1両まるまる個室”はほかに、超高額なクルーズトレイン「トワイライトエクスプレス瑞風」の「ザ・スイート」のみですが、「伊予灘ものがたり」ならグリーン個室料金2万8000円(運賃など別)で占有できます。

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