まるで要塞「2層構造の高架駅」増加中 路線別vs方向別 なかには「個性派」も!?

鉄道路線が分岐する駅が高架化すると、要塞のような「2層構造」になる例が見られます。同じ2層でも、その配線構造によってタイプが分かれます。

巨大な壁のごとく 鉄道2層高架駅

 鉄道路線が分岐する駅を中心に、高架駅かつホームが2階・3階の2層に分かれた「3段重ね」の形をした、まるで要塞のような威容を誇る駅が増えてきました。

 これらの多くはもともと地上駅でしたが、線路が平面交差するため対向列車を待つ必要があったり、用地が狭かったり、あるいは付近の踏切が「開かずの踏切」状態になっていたりと、さまざまな制約がありました。それらを解消するのが「のりばを2層に分離する」というものでした。

 分離のしかたにもいろいろあり、同じ方向どうしで同じ階にする駅や、同じ路線の上下線を同じ階に置く駅など、バラエティがあります。

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2層構造で空港線が分岐する京急蒲田駅(画像:Google Earth)。

【方向別】
●京急蒲田駅(京急本線・空港線)
 2階が北行き(品川方面)、3階が南行き(横浜方面・羽田空港方面)に分かれています。空港に行きたいのに間違えて横浜方面の電車に乗ってしまった場合も、同一ホーム上で乗り換えができるのがメリットです。改札から3階へ直結する上りエスカレーターもあります。

 しかしこの駅の変わった点は、2階ホームからも羽田空港行きの電車が発着する点です。それは横浜方面からやってくる羽田空港行き「エアポート急行」などの列車で、京急蒲田駅で「方向転換」するのです。京急蒲田を出て空港線へ分岐したあともしばらく"逆走"し、渡り線で羽田空港方面の線路に移ります。なおレアケースですが、早朝・深夜には一部の快特・特急・普通もこのようなスイッチバックを行い、横浜~羽田空港を直通します。

 現在の高架駅が完成したのは2012(平成24)年。もともとはホーム2本に、空港線用のりば(1番線)と横浜方面のりば(2番線)、反対側に品川方面のりば(3番線)があるだけでした。空港から品川方面に向かう電車は1番線を出たあと、渡り線で品川方面の線路へ移っていました。

 ほかにも、ホーム南側の一部が切り欠かれて、そこに待避線とのりばが設置され、ラッシュ時などに優等列車の待ち合わせが可能となっているという、面白い構造になっています。

●青砥駅(京成本線・押上線)
 2階が西行き(京成上野方面、押上方面)、3階が東行き(成田空港方面)です。コンコースはM2階にあるため、実質的に「4階建て」となっています。京急方面から来た青砥止まりの列車から千葉県方面へ、同一ホームで乗り換えができる構造です。

 現在の形になったのは1980年代。それまでは京成高砂駅に似た平面駅で、本線と押上線の2路線が合流し、東側で複線に収斂していく構造でした。

まさに建造中の「要塞」2層高架駅

●淡路駅(阪急京都線・千里線)
 現在進行形で高架化工事が進んでいます。現在は2面4線で、東行きは京都河原町方面と北千里方面、西行きは大阪梅田方面と堺筋線方面に、それぞれ同一ホーム上で乗り換え可能です。各方面の電車が駅の両側で平面交差していくため、ダイヤ上で大きな制約となっているほか、「開かずの踏切」も存在します。

 高架化後は、2階がコンコース、3階が東行き(京都方向)、4階が西行き(大阪方向)となります。引き続き同一ホーム上で乗り換え可能ですが、ホーム幅は見違えるように広くなるほか、駅の手前で信号待ちで電車が停まる風景も見納めとなります。高架切替は2028年度の予定となっています。

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高架化工事が進む阪急淡路駅(乗りものニュース編集部撮影)。

【路線別】
●布施駅(近鉄大阪線・奈良線)
 2階がコンコース、3階に近鉄大阪線の上下線、4階に近鉄奈良線の上下線があります。

 近鉄はラインカラーとライン記号を設定しており、布施駅の案内板や駅看板でも「青色・D=大阪線」「赤色・A=奈良線」と、行先が識別しやすくなっています。

 現在の形になったのは1970年代。平面時代も大阪市内まで奈良線と大阪線で線路2本ずつ分離されていましたが、高架化にともない、複々線区間は方向別の配線に変更されています。

●知立駅(名鉄名古屋本線・三河線)
 現在進行形で高架化工事が進んでいます。現在は3面5線の平面駅で、三河線は碧南方面と豊田市方面で同じ方向に発着する特殊な構造になっています。

 高架化後は2階が名古屋本線、3階が三河線となり、それぞれ2面4線という、類を見ない豪華な構造です。名古屋本線にとっては2面2線から2面4線となり、優等列車の待避が可能となります。高架駅の完成は2028年度目標となっています。

何階に行けばいい!?不思議な構造も

【方向別&路線別】
●太田川駅(名鉄常滑線・河和線)
 変わり種なのが、同じ名鉄ですでに完成済みの太田川駅です。2面4線と2面2線の2層構造になっていて、さらにその間に踊り場的な「中3階」があるのです。

 2階は1・2番線が南行き(中部国際空港方面・河和方面)、3・4番線が北行き(名古屋方面)で、「中3階」を挟んだ3階は5・6番線のみで河和線の名古屋方面行きとなっています。

 これによって、常滑線は上下線どちらも2階、河和線は2階と3階で上下線のりばが分かれている、不思議な構造になっています。背景としては、空港アクセスの基幹路線である常滑線にまず2面4線の2階を与え、分岐する河和線は常滑線との平面交差を回避するために2層構造にした、という関係性が見え隠れします。またこの配線により、太田川駅折り返しの名古屋方面行き列車は、"逆走距離"を最小限にして折り返し運転を行うことができるようになっています。 

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