白ナンバートラックの飲酒対策はなぜザルなのか 八街事故 課題多い政府緊急対策

千葉で発生した飲酒運転のトラックによる小学生5人の死傷事故を受け、政府が緊急の交通安全対策を取りまとめました。白ナンバーのトラックへのアルコールチェック徹底が言われていますが、義務化には大きな課題が横たわっています。

同じ「運送業」でも、飲酒対策には偏りがあった

 千葉県八街市で発生したトラックによる下校中の小学生5人の死傷事故。飲酒が原因だったことがわかり、今なお日常的な飲酒運転の実態が浮き彫りになりました。菅義偉首相も出席した2021年8月4日(水)の関係閣僚会議では緊急対策が取りまとめられましたが、そこでわかった問題点を解説します。

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警視庁による2020年末の飲酒検問。警察行政の基本は取締り。安全運転管理者による飲酒運転防止は後手に回った感がある(中島みなみ撮影)。

 飲酒運転を効果的に減少させるために、行政は職業ドライバーを中心に対策を講じてきました。繰り返し悲惨な事故が起きているからです。それにも関わらず、6月28日に起きた千葉県八街市の事故原因も、運送会社勤務の運転者による飲酒でした。

 閣僚会議で取りまとめられた緊急対策は、飲酒運転の根絶に関して、次のような方針を示していました。

「アルコール検知器を活用した酒気帯びの有無の確認等安全運転管理者業務の内容の充実を図る」

 業務上の安全運転は、まずは企業の責任者が呼び掛ける義務があります。対策の責任者は企業のトップですが、その代理が上記の緊急対策にある安全運転管理者です。免許保持者の飲酒絡みの違反には重い罰則が科せられているのは周知のとおり。職業ドライバーを抱える企業と世間のあいだに大きなギャップがあるようには思えませんが、行政の役割分担に盲点がありました。

 これまでの飲酒運転対策で重点的に対策が講じられてきたのは、例えば宅配便や貸切バスなどの「緑ナンバー」でした。有償で運送を行うほうが、より責任が重いと考えられたからです。緑ナンバーに対する効果は確かに現れました。ある大手宅配便の担当者は、こう話します。

「飲酒運転なんて、できる環境にありません。出庫前と帰庫時の点呼において、管理者の前で専用のアルコール検知器を使って検査します。そもそも勤務日の前日は飲酒するな、と言われているぐらいで、許容範囲はありません。発覚した場合の車両に対する運行停止処分も、どんどん厳しくなっています」

有償で運送しなければ、アルコールチェックをする義務がない

 こうした取り組みの企業がある一方で、八街市の飲酒死傷事故がおきました。運転者は運送会社の勤務ですが、前述とは何が違うのでしょうか。

 事故を起こした運送会社のトラックは、親会社が製造施工する建築資材を専門に運ぶ「白ナンバー」でした。緑と白の差は、有償で運ぶか否かの違いでしかなく、物か人かなど運ぶ内容による違いはありません。

 ただ担当する行政の違いで、管理者の名前も役割も、似て非なるものです。白ナンバーでは「安全運転管理者」、緑ナンバーでは「運行管理者」と呼ばれます。前者は警察庁と都道府県警察、後者は国土交通省と地方支局が担当します。

 交通に詳しい弁護士の高山俊吉氏は、その課題を次のように指摘します。

「貨物や旅客の業法で管理されている緑ナンバーと違って、白ナンバーを管理する道路交通法では、安全運転管理者に対してアルコールチェックによる飲酒管理が必要である、とまではされてないのです。あるとすれば、赤い顔をして飲酒の懸念がある運転者に指示をするとか、飲酒が運転に与える影響を日常的に教育するとか。つまり、安全運転管理者を置くことに、どれだけ実効性があるかわからない。緊急対策では、(白ナンバーのアルコールチェック)義務付けが明確にされるとばかり思っていました」

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アルコールチェックを義務化することを期待する高山俊吉弁護士(中島みなみ撮影)。

 閣僚会議の事前報道では、関係者の話として、警察庁が白ナンバートラックへのアルコールチェックを義務付ける方針を固めたと報道されていました。しかし閣僚会議で打ち出された対策は、次の通り。

「乗車前後におけるアルコール検知器を活用した交通安全教育の推進等、安全運転管理者が行う安全運転管理業務の徹底や対策の拡充を図り、飲酒運転の根絶に向けた取り組みを推進する」

 緊急と言いつつ、内容は抽象的と言わざるを得ません。

白ナンバー、数が多過ぎて把握できない

 安全運転管理者の役割を議論する前に、この制度は、根本的な問題も抱えています。警察庁交通局は、閣僚会議でこのような報告をしています。

「安全運転管理者を置かなければならない事業所の全国把握は難しい」

 白ナンバーは、公道を走るための車両登録をすれば誰にでも交付されます。その後に通常は5台以上(乗車定員が11人以上の自動車では1台)を業務として使う車検証上の使用者(=企業)に対して、安全運転管理者を置く義務が生じます。仕組みとして、安全運転管理者の選任は後回しでもよいわけです。これに対して緑ナンバーでは、運輸局への有償運送事業の届出をする必要条件として運行管理者を選任しなければ、ナンバーの取得ができません。

 関係者は、この仕組みの課題をこう指摘します。

「都道府県警察にとって届出を怠っている事業者をあとで把握することは難しい。さらに安全運転管理者を置かなければならない事業所の数が多過ぎるほか、効果的な指導のためのマンパワーも不足している」

 そのため閣僚会議では、飲酒運転の根絶を図るための緊急対策の第一をこう記しました。

「自動車を一定数以上保有する使用者に義務付けられている安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図る」

 未選任事業所をどう把握するか。白ナンバー事業者に対する飲酒対策は始まったばかりです。

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