ヤマハ「電動キックボードの対抗馬」市場投入間近か 立ち乗り3輪「トリタウン」

ヤマハが将来の電動化目標などを発表する説明会のなかで、立ち乗りの3輪モビリティ「トリタウン」の市場投入に言及しました。電動キックボードの不安点を払拭するという乗りもの、どのようなものでしょうか。

「トリタウン」生産に向けて着々と準備

 ヤマハ発動機が2021年7月19日(月)、報道機関向けに「環境技術説明会」を開催。自社が供給する製品を使ったCO2(二酸化炭素)排出量について、2010(平成22)年を基準として2030年に24%減、2035年に38%減、2050年には90%減という段階的な数値目標を公表しました。

 バッテリー積載能力などで限界があるモーターサイクル分野では、いかに環境にやさしい“新しい乗り物”を開発、市場投入できるかが、目標達成の説得力となります。執行役員の丸山平二技術・研究本部長は、電動バイクなど開発中の小型モビリティについて言及するなかで、キックボード型のパーソナル・モビリティ「トリタウン(TRITOWN)」の市場投入が間近であることを明かしました。

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ヤマハ「トリタウン」(画像:ヤマハ発動機)。

 2017(平成29)年の東京モーターショーで初めて参考出展されたトリタウンは、立ち乗り型の小型モビリティです。前2輪+後1輪の3輪で、立った状態と同じように左右の脚をやや開いて平行に置き、左右の体重移動でスキーのように操縦します。乗ったままバランスをとることで自立するヤマハ独自のパラレログラムリンクを使ったリーン機構(前輪が傾斜する機構)を備え、安定性にも優れた新しい乗り物です。

 ただ、当時は新しい乗り物であるために法律的な位置づけがあいまいで、公道走行が難しいのではないかと考えられていました。2021年の現状ではどうでしょうか。丸山本部長は市場投入にあたって課題があるのかという問いかけを、きっぱりと否定。市場投入に自信をのぞかせました。

「現在のところ技術的な課題はないと考えている。生産に向けて着々と準備を続けている」

 ヤマハはトリタウンを「短距離移動をもっと楽しく快適にする」ラストワンマイル・モビリティの代表として掲げています。電動キックボードと同じカテゴリーの乗り物ですが、こうも説明します。

「キックボードは足を揃えて乗るうえ、タイヤが若干小さいので段差に弱いなど、町中で乗っていただくには弱点がある。それを払拭して安全かつ楽しく乗っていただけるモビリティとして開発している」(丸山本部長)

道路交通法改正をにらむ

 記者(中島みなみ)は2019年11月、JR高山駅西交流広場を起点に実施された公道走行実験でトリタウンを体験しています。このとき、確かに歩道と車道の段差も、点字ブロックに乗り上げて走り続けた場合も、ハンドルをゆさぶられることはありませんでした。

 トリタウンは14インチタイヤをはき、最低地上高が180mm。竹馬に乗った感じで、ちょっと見晴らしがよくなった気がします。足元が不安定な状態で視線が高くなると不安になりますが、前2輪のリーン機構で安定しているため、操縦方法を体感すれば楽しさが優って、まさに移動に楽しさを加えたヤマハらしさを感じることができました。CO2削減のモビリティとして例示される期待を感じさせる乗り物です。

 ヤマハの自信は、新しい乗り物を織り込んだ道路交通法の改正が具体化しつつある時代が後押ししています。

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高山での実証実験に使われた「トリタウン」(中島みなみ撮影)。

 公表されているトリタウンの大きさは1100mm(長さ)×600mm(幅)×1130mm(高さ)。折りたたんで持ち運べるほどコンパクトではありませんが、シェアリング事業で使われている電動キックボード、例えば幅は「LUUP」のキックボードより150mm広いものの、「mobby ride」のそれより長さは170mm短く、ほとんど車格は変わりません。また、警察庁が示した電動キックボードの規定にも収まる大きさです。

 2021年現在、大都市圏を中心に、これらシェアリング用の電動キックボートを小型特殊自動車扱いにする特例が運用されています。警察庁交通局は、事業者が積み上げたデータの提供を受けて、年度内にも電動キックボードの最終的な取り扱いを、有識者検討会で方向付ける予定です。順調に進めば、2022年には電動キックボードなど新しいモビリティを盛り込んだ道路交通法の改正や道路運送車両法の改正が起案される予定です。

 ヤマハには新しい乗り物の市場を作った実績があります。1990年代に先駆けて開発した電動アシスト自転車は、2030年には1500万台の世界市場になると、丸山氏は予測します。

 トリタウンがこれまでと同様の個人所有になるのか。シェアリング用途など事業用での供給となるのか。市場投入の形はわかりませんが、新しいパーソナル・モビリティとして実感できるようになるのは、それほど時間を必要としないことが伺われます。

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