踏切が「半分だけ」開く かつて名古屋で見られた踏切警手の職人技 今は踏切自体が廃止に

名鉄神宮前駅脇にあった踏切では、踏切警手と呼ばれる専門職員が遮断桿を手動で操作する光景が見られました。「開かずの踏切」対策として交通をさばいていたわけですが、ここでは大変珍しい通行システムも導入されていました。

近年まで存在した「職人技」見られた大踏切

 かつて大きな踏切では、「踏切警手」と呼ばれる専門職員が、遮断桿の上げ下げなど遮断機の操作を行うところがありました。2021年現在、遮断機と警報機がセットになっている踏切は全て自動化されており、踏切警手が一から動作させているところはありません。
 
 すでに見かけなくなって久しい踏切警手ですが、その“職人技”が近年まで見られた踏切が、名古屋市にありました。

 その踏切があったのは名古屋鉄道の神宮前駅そば。同駅には名古屋本線の全列車に加え、中部国際空港方面に発着する全列車も停車します。また、すぐ近くにはJRの熱田駅もあり、東海道本線を走る列車も盛んに往来します。そうした状況から、「開かずの踏切」と化していました。

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神宮前駅脇にあった踏切。名鉄名古屋本線や常滑線のほか、JR東海道本線もまたいでいた(2009年8月、小川裕夫撮影)。

 踏切を迂回する手段として、脇には跨線橋が架けられていました。しかし、利用できるのは歩行者や自転車のみで、その人たちも、多くは踏切が開くのをひたすら待ち続けていました。

 同踏切には「半開」という珍しいシステムがありました。踏切は基本的に「全開」と「全閉」の2つの状態しかありません。遮断桿が完全に上がりきるか降りきるかです。半開はその名の通り、遮断桿が途中まで上がる仕様。踏切警手が列車の往来を見極め、臨機応変に踏切を操作していたのです。

 先述したように、ここは多くの線路が並行していますが、名鉄とJRの線路の間には小島のような空間が設けられていました。踏切が半開の時、自転車やバイクだけは小島まで進めたのです。

 つまり、片方の踏切が半開になることで小島までいったん進め、そしてもう片方の踏切が半開になると、踏切を完全に通過することができたのです。クルマは半開では通行できませんが、少しでも人や自転車、バイクを滞留させないように考案されたシステムといえます。3路線が行き交う中、状況に応じて通行人をさばいていた踏切警手の姿は職人とも呼べるものでした。

 しかし、それでも何度か事故が発生したほか、小島での待避も危険という意見もあり、2012(平成24)年にこの踏切は廃止されました。後に踏切脇の跨線橋がリニューアルされましたが、車道としては分断され現在に至ります。

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