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2021年春廃止/開業の高速バスまとめ 消える名物夜行バス 新規路線にあるトレンド

2021年春の廃止路線、開業など高速バスに関する動きをまとめました。感染症拡大による移動の自粛が長引き、かつてドル箱であった路線も休止せざるを得ない中、これまでにない発想の高速バス路線も生まれています。

頼みの綱「羽田空港発着」もならず 名物夜行バス廃止

 2021年春には、高速バスも路線の廃止や新設などのダイヤ改正が行われます。全国の主な動きをまとめました。

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2021年春は、高速バス各社がダイヤを大きく見直す。写真はイメージ(中島洋平撮影)。

京急バス 夜行から完全撤退

●京浜急行バス
・廃止:品川・渋谷~鳥取・倉吉線「キャメル号」(共同運行先の日の丸自動車・日本交通とも)
・休止:品川・渋谷~徳島線「エディ号」(共同運行先の徳島バスも)
・撤退:横浜~東京~宮古・山田線「ビーム1」(岩手県北バスは運行継続)
・撤退:横浜~東京~弘前・五所川原線「ノクターン号」(弘南バスは運行継続)

 京急バスは今回のダイヤ改正で、長距離夜行バスの全路線から事実上の撤退を選択しました。各路線とも新型コロナの影響などで2020年から運休が続いており、そのまま2021年3月15日をもって運行を終了しました。

 いずれの路線も運行開始は1986(昭和61)年から1989(平成元)年と30数年の歴史を持ち、「首都圏から鉄道では到達しづらい地方を結ぶ」「鉄道より低運賃 」という、今の高速バスの先駆けとして成功を収めた路線ばかり。この後起きた「夜行高速バスブーム」ともいうべき参入の波は、都市圏の事業者だけでなく、経営基盤が弱い地方の事業者にも大きな利益をもたらしました。

 また各路線とも利用者数は極めて多く、特に当時、智頭急行線や鳥取自動車道などが未開通だった鳥取を目的地にした「キャメル号」は年間利用者が5万人以上、青森を中心とする鉄道網から外れていた弘前・五所川原を目指した「ノクターン号」は年間利用者数7.6万人、もちろん何台もの車両によって運行されていました。

 そしてこれらの路線が華やかなりし頃の姿を、図らずもテレビ番組「水曜どうでしょう」の人気シリーズ「サイコロの旅」で見た人も多いのではないでしょうか。

 次の移動手段をサイコロで決める同シリーズで、「キャメル号」は1997(平成9)年放送のシリーズ第3弾に、「ノクターン号」は1999(平成11)年放送の第6弾で登場。ノクターン号は追加料金で乗車できた「スーパーシート」(当時)の広さ・快適さに「東日本の女王」との賛辞が送られています。その他「エディ号」「ビーム1」も選択肢に登場し、今はなき夜行バス・列車も多く登場する同番組の映像は、歴史的な価値があるといえるでしょう。

 しかし近年では競合の増加などで各路線とも低迷が続き、「キャメル号」も2020年4月に、京急のお膝元ともいえる羽田空港(羽田エアポートガーデン)への乗り入れによって打開を図ろうとしていました。しかしこのタイミングで感染症が拡大し、乗り入れの延期ののちにバスの運行そのものも休止を余儀なくされました。なお、夜行バス以外でも、羽田空港に発着する鬼怒川温泉、鹿島神宮方面の路線から撤退するなどしています。

直撃「インバウンド路線」の苦境

 岐阜県高山市を中心に路線バス・高速バスを運営する濃飛バス(濃飛乗合自動車)も、複数の高速バス路線を2021年4月1日付けで廃止すると発表しています。

●濃飛バス
・廃止:高山~富士山線(共同運行先の富士急バスも)
・廃止:高山~扇沢線
・廃止:特急バス神岡~平湯温泉線(共同運行先の富山地方鉄道も)

 濃飛バスが拠点とする岐阜県高山市の周辺は、新型コロナの流行前は外国人観光客に人気を博し、同社はさらに「立山・黒部アルペンルート」の入口である扇沢や、定番スポットといえる富士山など、他の観光地と自社エリアを高速バスで結び、さらなる滞在の増加をうながす戦略をとっていました。しかし、上記の各路線とも2020年4月から運休が続き、再度運行することなく今回の廃止に至っています。

 一方の神岡~平湯温泉線は、JR富山駅・富山空港から上高地・乗鞍への玄関口である「平湯温泉」へダイレクトに乗り入れる路線ですが、2016(平成28)年の路線開設から早々に一部便のワゴン車への車両変更・運転本数減など、厳しい状況が続いていました。神通川の上流にあたる高原川沿いの霧深い谷を分け入り、3時間近くかけて運行されるこの路線は、「インバウンド向け秘境ローカル路線バス」とも言える佇まいがあり、その廃止が惜しまれます。

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平湯温泉に到着した濃飛バスの車両(宮武和多哉撮影)。

●宮崎交通
・廃止:宮崎~大分線「パシフィックライナー」(大分交通ほか共同運行5社とも)
・休止:宮崎~鹿児島線「はまゆう号」(共同運行先の南国交通も)
・休止:延岡~宮崎線

 宮崎交通も4月1日付けで、1路線を廃止、2路線を休止します。九州の高速バスは、エリア内が安価で乗り放題となる「SUNQ(サンキュー)パス」の利用者が多く、近隣の地域からパスで宮崎へ立ち寄る際の選択肢が一気に減少するといえます。

「パシフィックライナー」は2015(平成27)年、東九州自動車道の大分~宮崎間が全通したことを受けて開業したものです。大分~宮崎間のバス路線はかつて一般道経由で存在したものの、道路事情などから長く営業できず、宮崎交通にとってはリベンジといえる開業でした。しかしこの高速道路を経由する数系統のバス路線も利用がなかなか伸びず、いずれも早い段階で休止・廃止となっています。

 また1982(昭和57)年の開業当時から毎時1~2本程度の運行が確保されてきた「はまゆう号」は、宮崎・鹿児島両県の県庁所在地を結ぶだけでなく、宮崎空港・鹿児島空港からの利用も多かったため、空港利用者の大幅減も影響が大きかったと見られます。

高速バスの次なるトレンドは「密なし通勤」「近くへ快適に」?

「地方から大都市への足」「観光地への足」など、高速バスがこれまでの成功事例に頼ることが難しくなる中、「近距離」「主要鉄道駅を経由しない」「通勤時間でリモートワーク」など、新たな需要に路線に活路を見出す事例が増えています。

●神姫バス
・開業:姫路市内~三宮・神戸空港線「快適特急 らっきゃライナー」 ※実証実験
・増便:三田~大阪線(阪神バスが共同運行に参入)

 JR神戸線の新快速で約40分の姫路~三宮間、一見すると高速バスが参入する隙間はないかに見えます。しかし「らっきゃライナー」がカバーするのは姫路市北部の田寺・横関・大寿台など、渋滞などによって姫路駅へのアクセスに時間がかかる地域ばかり。市の中心部である姫路駅・姫路城近辺を経由せず三宮方面を目指す新路線です。

 神姫バスはほかにも今回のダイヤ改正で、兵庫県三田市郊外の「ウッディタウン」から三田駅に寄らず大阪市内へ向かう路線の大幅増便、終バス繰り下げなど、思い切った施策を行っています。姫路と三田はともに「市のJRの中心駅から乗っても座れない」(手前側の駅から混雑している)ことで知られ、鉄道と違って「座れる」という利点を発揮しているといえるでしょう。

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「快適特急 らっきゃライナー」向け神姫バス車両(神姫バスTwitterより)。

 また、こうした通勤目的のバスでは、東急バスが2021年2月から4月の平日に実証実験として運行している「Satellite Biz Liner」(たまプラーザ駅~東京駅)も特徴的です。「シェアオフィスバス」とのキャッチフレーズでリモートワークの環境を整え、東急田園都市線ユーザーへ新しい通勤スタイルを提案しています。

●京成バス・小湊鉄道
・開業:松戸駅~三井アウトレットパーク木更津線

 京成バスと小湊鉄道も3月16日から、「近場の買い物」に主眼を置いた新路線を開設。松戸に近い外環道を活用したもので、松戸駅と三井アウトレットパーク木更津をノンストップ、最短75分で結びます。高速バスのトランクルームにベビーカーや大きな荷物も預けられ、ショッピングの役に立ちそうです。

※ ※ ※

 このほか、路線の統合や延伸も行われます。東急バスはフジエクスプレスと共同(富士急湘南バスから変更)で4月1日から、日吉・たまプラーザ~御殿場プレミアム・アウトレット線を、山中湖や富士急ハイランド・河口湖まで延伸します。日吉方面~河口湖方面の直行便と、御殿場プレミアム・アウトレットパーク線を統合する形です。

 また山梨交通と京急バスも4月16日から、これまで別々に運行していた竜王・甲府~羽田空港線と、竜王・甲府~横浜駅線(特定日のみ運行)を統合し、横浜駅経由の羽田空港線として装いを新たにします。

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