コロナ禍で世界中が「鎖国」のいま 国際線に搭乗してみた

新型コロナウイルスの影響で国をまたいだ移動が難しくなり、世界中がまるで「鎖国」のような状態になっています。そうしたなか、香港への入境資格がある筆者が、成田から国際線に搭乗。異常事態にあるその姿をリポートします。

香港への入境資格がある筆者

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、世界経済に大きなダメージを与えましたが、その経済的被害が大きかったのは、小売、航空、観光、飲食業界でしょう。世界各国が感染拡大防止のため自国民または在留資格を持った外国人しか入国・入境を認めない国・地域が増えたため、国際線は事実上ストップというほど縮小しました。

 筆者(武田信晃)は香港にも居を構え、入境資格があり、幸運にも香港限定ではありますが、いつでも国際線に乗ることができる立場にある数少ないジャーナリストのようです。再び感染が世界で広まりつつある国際線はどのような状況にあるのか、航空券予約から香港国際空港に降りるまでをリポートします。

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香港国際空港で飛行機を降りたあと、検疫に向かう(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

 日本政府は、国際線の就航を成田国際空港と関西国際空港、セントレア(中部国際空港)などに限定し、水際対策をしやすくしています。筆者は成田を利用しますが、成田発の便を見ると、香港のナショナルフラッグ、キャセイパシフィック航空が火、木、土の週3便、JAL(日本航空)が日曜、水曜の週2便、ANA(全日空)が毎週金曜日に1便の、合計週6便で月曜日を除き1日1便、どこかの航空会社が香港行きを飛ばしています。

 たぶん航空会社で調整したのでしょう……これは、ある種の談合かもしれませんが、こういう状況下であれば、どこかの曜日だけ1日2便となり、飛ばない日が週2日に増えるよりはありがたいです。

 なお、格安航空会社(LCC)の香港エクスプレスは全滅でまったく運航しておらず、フルキャリアしか選択肢がないことも付け加えておきます。新型肺炎前は、1週間に週に何十、何百というフライトがあったことを考えると、隔世の感があります。

航空券の予約時点から普通じゃなかった

 筆者が使ったのは、2020年11月18日(水)の成田9時35分発、香港13時55分着のJL029便ですが、こんな状況だったので、航空券の予約の時点から普通ではありませんでした。

 安く買うために航空券の比較サイトを利用するわけですが、6万円代という、コロナ拡大前のフルキャリアでの通常価格に近い値段が出ました。航空券の値段があがっていると聞いていたので、これはラッキーと思い、予約を進めていくと、最後のクレジットカードでのプロセスで決済がおりません……。

 この比較サイトの隅に小さく「注意事項」が表示されていて、そこをクリックすると、新型コロナウイルスが何かその会社に影響を与えているのか、「現在、この航空券を扱っている会社は決済トラブルが起きている事例があり、気をつけてください」と書かれていました。その表示通りだったので、格安サイトからの予約をあきらめました。

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ほとんど人がいなかった成田空港の出発ロビー(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

「飛んでない便」の予約ができる!?

 そうなると、航空会社のサイトから直接予約することになります。キャセイ、JAL、ANAで一番安かったのがJALでした。

 ところが、JALは日曜日と水曜日のフライトにも関わらず、すべての曜日が予約できます。往復で6万円の日もあれば、15万円位する場合もあります。頭では日曜と水曜と理解していても、「実は毎日運航してる?」とついつい思ってしまいます。念のためJALに電話で直接確認すると、価格が高い便は飛んでいないということが分かりました。

 ただ、これも一筋縄ではいきません。一番安かった便を買おうとクリックすると、スケジュールの詳細が現れ、それはすこし先ではありますが、香港からの帰国する場合のフライトが関空経由で成田に着くというものでした。

 乗客は全員、日本入国時にPCR検査を受ける義務があるため、筆者はこの場合、関空でPCR検査を受けるという流れになります。検査結果待ちに要する時間を考えると当然、成田に向かう便に乗れる保証がありません。

 不思議なので改めてとJALに電話すると「ややこしくて申し訳ないのですが、それは買わないでください」と言われてしまいました……。そんなことをしながら、ようやく水曜日のフライトを購入できました。

水曜日の第2ターミナルからは1日たった13便しか飛ばなかった

 香港への出発まで3週間ほどになった10月26日(月)、JALから出発を10時10分、到着を14時半に変更するというメールが来ました。それどころか、携帯電話に直接電話までかけてくれました。ただ、筆者は仕事中で出られなかったので、留守電に「フライトについての電話です。改めて電話し直します」というメッセージが入っていました。私から掛け直すと「スケジュールの変更があります」ということで、変更内容の詳細を説明してくれました。

 成田空港に向かうとき、京成電鉄を使ったのですが、下りの成田方面に向かう列車は結構、混んでいました。まさかの通勤ラッシュで、途中からは結構3密状態になりました。彼らは多くが成田空港で働く人たち。飛行機はほとんど飛ばなくても、どれだけ多くの人が成田空港で働いているか、というのを教えられました。

 成田空港第2ターミナルの出発ロビーに着きます。言うまでもなく閑散としていましたが、実際、時刻表を見ると、第2ターミナルから出発する便は1日で全15便。うち2便は第1ターミナルからに変更になっていたので、13便です。

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この日の成田空港第2ターミナルの出発予定(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

 行き先は、香港のほか、大連、デリー、シンガポール、ニューヨーク、フランクフルト、ドバイなど。スケジュールが表示されているディスプレイは4つありますが、2つで十分というのが、今の状況を表していました。それでも、筆者が前回に搭乗したときは1日4便だったので、だいぶ世界とつながり出したことを実感しました。

搭乗者は約40名 これでも「多め」

 今ではウェブでチェックインできますが、グランドスタッフに実際の状況を聞きたかったので、あえてカウンターで手続きをしました。

 今回の使用機体は、総座席数195のボーイング787-9「ドリームライナー」だそう。香港便は、普段なら往来する人が多いので収容人数の多いB777を使うようなところですが、燃費がよく、機体が小さい「ドリームライナー」を使うことで、少しでも収益に貢献させようという努力が感じられました。

 とはいえ、今回の搭乗者数は約40人だという……。前週は10人のときもあったそうで、「今日は多め」だといいますが、それでも飛ばすだけ赤字のはずです。

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約40名の搭乗だった成田発香港行きJAL機内の様子(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

 B787-9のエコノミークラスの座席配置は2-4-2の1列8席ですが、そもそもチケットを買うとき、窓側2席と通路側2席の4席しか販売していませんでした。前後の販売座席は、1列空けているのかわかりませんが、空けないで販売したとしても、エコノミークラス総座整数の半分しか販売できません。

 航空会社が赤字覚悟で飛ばす理由について、ある航空関係者に聞いたところ、将来の発着枠確保の関係からフライトを継続して飛ばしていると話していました。「40」という数字を聞いて、本当になんとも言えない気持ちになりました。

座席の警告はほぼ無意味な状態

 チェックインの際、私のパスポート、香港の身分証明書、そして香港のホテルの予約確認書を提示しました。香港は11月13日(金)より中国本土、マカオ、台湾から香港に入る人を除き、入境者全員が14日間、ホテルでの強制隔離を義務付けられたためです。

 チェックイン、出国手続きを済ませますが、人がいないので非常にスムーズ。職員は、暇すぎて手持ち無沙汰状態でした。

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成田空港の免税店は開いていたが、お土産を買う人はほぼ皆無(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

 搭乗口に向かいますが、オープンしていた店舗は、口紅などを売る免税店と電器店など。ファッションブランドでは、シャネルは開いていましたが、エルメスは新型コロナウイルスを理由に閉店したままでした……。

 搭乗口に着くと、ソーシャルディスタンスを確保するため、一部の座席には警告文を書いたステッカーが貼られていましたが、人がいないので、そんな心配をする必要すら感じませんでした。携帯電話を充電するための椅子は、いつもは人気ですが、それも違っていました。

 搭乗は従来通り、優先搭乗から始まりましたが、搭乗人数が少ないので、意味があまりありません。

まるでファーストクラス 乗客が少ないためサービス向上?

 機内では、自席(窓側)の前後左右には誰もいませんでした。

 フライトアテンダントに話しかけると「今月は3本フライトが入りました。これでもここ数カ月よりは多いんですが、普通のときと比べると、1カ月あたりのフライト時間数は半分にも満たないですね」と話してくれました。

 フライト自体はいつも通りでしたが、窓の外を見ると、駐機場が満杯という光景は初めてだったほか、ターミナル3のLCC用駐機場でジェットスターやピーチの機体がじっとしている光景も異様でした。

 機内で驚いたのは、フライトアテンダントがエコノミーの乗客にも名前を呼びながらサービスしていたこと。ファーストクラスやビジネスクラスの客をもてなすとき、個人名を言いながらサービスをするので彼女たちにとっては特別なことではないでしょうが、まさかエコノミーで「タケダ様」と呼びかけられるとは思いもしませんでした。もちろん、こういう心遣いはうれしいものです。

 機内食は1種類のみで、「鶏肉」か「魚」かといった選択の余地はありません。今回は、チキン、炒飯、味噌汁、カステラ、アイスクリームなどでした。

 座席を2つ自由に使えたのはありがたかったです。自分の座席の画面で映画を観つつ、隣の座席の画面にフライトの現在地を表示させることができたからです。トイレも使う人がいないので清潔でした。

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「距離を保ちましょう」と椅子にステッカーが貼られていた成田空港の搭乗口(2020年11月18日、武田信晃撮影)。

 飛行機は、ほぼ定刻通りに香港国際空港へ到着。そして筆者は、同空港内での検疫プロセスへと向いました。

「鎖国下」でのフライトで感じたのは、とにかく搭乗者がいないこと。快適ではありますが、これでは航空会社が倒産まっしぐらというのが、誰の目にもわかります。

 ワクチンの実用化が近づいているようですが、それはまず先進国の人たちが先に受けられるのであって、発展途上国の人たちはその後です。全世界の人にワクチンがいきわたってこそ感染拡大のリスクが低減されることから、元に戻るにはまだ時間がかかるでしょう。

 今後、日本政府が世界各国・地域の政府とトラベルバブル(簡単に言うと、国や地域が別でも同じ安心できる泡〈枠〉の中にいる、と見なし、その泡の中での移動は問題ないとすること)をさらに結び就航数が増えたとしても、国際線をとりまく経営環境はまだまだ厳しい感じを受けました。

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