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富山ライトレール、係員ノーチェックの「信用降車」を終日実施へ 不正は大丈夫?

富山ライトレールがICカード乗車券の利用者に限り、係員が運賃収受をチェックしない「信用降車」方式を終日に拡大します。乗降が円滑になるメリットがありますが、不正乗車の心配はないのでしょうか。

ワンマン運転では運転士が運賃収受を見届けるが…

 富山ライトレール(富山市)が、朝ラッシュ時のみ実施していた「信用降車」と呼ばれる方式を2017年10月15日(日)から終日に拡大します。

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富山ライトレールの富山駅北駅(2012年4月、中島洋平撮影)。

 富山ライトレールは富山駅北駅と岩瀬浜駅を結ぶ約7.6kmの路線で、路面電車タイプの2両編成(2連接車体)によるワンマン運転が行われています。

 路面電車やバスの停留所は多くの場合無人であり、一部を除き自動改札機や係員などによる改札や運賃収受は行われません。富山ライトレールも同様で、通常は後部車両側のドアから乗車し、運転士がいる先頭車両側で運賃を支払って降車する方式です。列車の運転士が運賃の収受を見届けます。

 ただ同社では、朝ラッシュ時に「passca(パスカ)」などのICカード乗車券利用者に限って、後部車両側ドアからの降車も可としていました。この方式を富山ライトレールでは「信用降車」と呼んでいますが、後部車両側ドアからの降車を認めてしまうことは、運転士の目が届きにくくなるため不正乗車されるリスクも高まります。これを終日に拡大するという富山ライトレール、どのように考えているのでしょうか。

マナー良好? 文字どおり「お客様を信用」

「信用降車」を拡大する背景について、富山ライトレールに聞きました。

――そもそも「信用降車」をなぜ始めたのでしょうか?

 朝ラッシュ時の乗降時間を少しでも短縮するためです。平日の始発から朝9時までは、後方扉付近に設置したICカード読み取り機を作動させ、ICカード乗車券をご利用のお客様に限り、後方扉側での支払いと降車を認めています。

――なぜ終日に拡大するのでしょうか?

 ICカード定期券の利用率が高まったことなどから、利便性向上の一貫として実施するものです。

――ICカード利用者以外も不正に乗降できてしまうと思いますが、どのように対策されるのでしょうか?

 不正乗車に対しては3倍の運賃を設定していますが、駅や車内での係員によるチェックは特に行っていません。そもそも当社線の片道運賃は現金で大人200円均一、3倍といっても600円です。「信用降車」は、文字通りお客様を「信用」して実施しています。

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2017年10月15日からの富山ライトレールにおける乗降イメージ。ICカード利用者は前方、後方どちらの扉からも降車が終日可能になる(画像:富山ライトレール)。

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「信用降車」実施中の後方扉は、乗車する人と降車する人が交錯することになりますが、富山ライトレールによると、利用者には「降りる人優先」のマナーが根付いているのだそう。「新たなお客様が多い春先には、2週間ほど駅に立って乗車指導を行いますが、それ以外で駅などにおいて後方扉の乗降マナーを指導するような掲示は特に行っていない」そうです。また、信用降車実施中の不正乗車が少ないことからも、終日への拡大に至ったといい、利用者の「マナーのよさ」も決断の要因につながっているようです。

日本では珍しい「信用乗車」、やはり不正は悩ましい?

 前述のとおり富山ライトレールでは「信用降車」と呼ばれますが、このように乗車券や運賃の適正管理を乗客にゆだね、係員による改札などを省略することは一般的に「信用乗車」と呼ばれます。日本では珍しいこの方式を採用している鉄道会社のひとつに、岐阜県と三重県を結ぶ第三セクターの養老鉄道(岐阜県大垣市)があります。

 ワンマン運転の地方鉄道などでは無人駅に停車した場合、列車後方の一部の扉のみが乗車用に開放され、降車の際はバスなどと同様、運転士の前まで移動して運賃を支払い降りる方式が一般的ですが、養老鉄道では無人駅でもホーム側すべての乗降扉を開放します。これを行う理由について、同社は以下のように話します。

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養老鉄道は元・近鉄養老線。近鉄から引き継がれた車両が走る(2013年3月、恵 知仁撮影)。

「年間利用者が600万人と、ほかの第三セクター鉄道と比べて利用者が多いこともあり、2両ないし3両編成のいちばん前でしか降りられない方式では、どうしても乗降に時間がかかってしまうためです。確かに運賃を払わず降りていく方もいらっしゃいますが、それには『無人駅では乗車券を購入するチャンスがないため』という側面もあります。そこで、一部の列車にアテンダントを乗務させ、車内で乗車券を販売するようにしています」(養老鉄道)

 ただ養老鉄道によると、やはり「不正乗車は悩ましい」といい、いま以上に有効な手段を模索しているとも話します。なお同社も不正乗車に対しては、目的の区間運賃の3倍を請求するという罰則を設けています。

 ちなみに、信用乗車方式は欧米の公共交通機関では一般的です。多くの鉄道駅では改札が設けられておらず、到着した列車に乗車券なしで容易に乗ることができてしまいます。しかし、車内や駅で係員による抜き打ちのチェックが行われており、正規の乗車券を持っていない場合は、運賃の何倍もの罰金を支払わなければならないこともあります。

【写真】不正利用の罰金は16倍! フィンランドの渡し船の場合

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フィンランドにおける信用乗船方式の渡し船乗り場。赤い看板には、正当な船賃(往復5ユーロ)を持たずに乗船した場合、80ユーロ(約1万600円、2017年10月11日現在)のペナルティを請求すると書かれている(2015年9月、太田幸宏撮影)。