冬にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が高い エルニーニョ監視速報
気象庁は10日、エルニーニョ監視速報を発表。それによると、大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られますが、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあります。今後、冬にかけて平常の状態が続く可能性もありますが(40%)、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高くなっています(60%)。
8月の実況
気象庁は10日、エルニーニョ監視速報を発表しました。
それによると、8月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.5℃で、基準値より低い値となりました。また、エルニーニョ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の6月の値は0.0℃で、基準値と同値でした。
太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、東部で平年より低くなりました。
太平洋赤道域の海洋表層の水温は西部で平年より高く、中部から東部で平年より低くなりました。
太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動はほぼ平年並みで、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)もほぼ平年並でした。
このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られますが、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあることを示しています。
今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部から東部に海洋表層の冷水が見られます。大気海洋結合モデルは、太平洋赤道域の西部から中部で貿易風が強まるとともに中部から東部の冷水がさらに強まることで、エルニーニョ監視海域の海面水温が冬にかけては基準値より低い値で推移する可能性が大きく、その後は西部の暖水の東進とともに、春にかけて上昇して基準値に近づくと予測しています。
以上のことから、今後、冬にかけて平常の状態が続く可能性もありますが(40%)、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高くなっています(60%)。
西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況
【西太平洋熱帯域】
8月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、冬にかけて基準値より高い値か基準値に近い値で推移すると予測されます。
【インド洋熱帯域:】
8月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、冬にかけて基準値に近い値か基準値より低い値で推移すると予測されます。
ラニーニャ現象とは?
「ラニーニャ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が強まると、西側の暖かい海水が厚く蓄積するとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが強まり、南米沖の海面水温が通常より低くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。
(「ラニーニャ(La Niña)」とは、スペイン語で女の子という意味で、「神の子キリスト」を意味する「エルニーニョ」の反対現象ということから名づけられました。)
09/10 14:42
tenki.jp