「神戸ワイン仕込めば仕込んだだけ売れた」20世紀後半の大ブーム

神戸ワインに使われているカベルネ・ソーヴィニヨン(右)、シャルドネ(中央上)、メルロ(中央下)、信濃リースリング(左上)、リースリング(左下)

神戸ワインに使われているカベルネ・ソーヴィニヨン(右)、シャルドネ(中央上)、メルロ(中央下)、信濃リースリング(左上)、リースリング(左下) Copyright(C) 2019 神戸新聞社 All Rights Reserved.

 「第3次ワインブーム」の中で販売準備が進められた神戸ワインは、発売前から大きな注目を集めた。1984年10月28日、農業公園(神戸市西区)オープンの初日には約8千人もの人が押し寄せ、ワイナリー内で販売する土産は、発売後1カ月で底を突いた。

 ワイナリーは増産を急いだ。ブドウの苗が成木になるまでに要する期間は7~8年。最初に植えた苗が成熟するに従って醸造量は飛躍的に伸び、83年に約10万本だった生産量は5年間で約82万本まで増加した。

 新たな生産組合ができ、栽培面積も広がった。そのうちの一つ、印路生産組合(同市西区平野町)は91年に11人の農家が設立。約9ヘクタールの農地にメルロやシャルドネなど、ヨーロッパの高級品種を植栽した。同組合で初代代表を務めたのが、今も栽培に携わる安尾勝(79)だった。

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 「『早く作れ、どんどん作れ』。最初はそんな感じやったね」

 安尾は懐かしげに目を細める。手元には、ブドウ栽培のデータがびっしりと書き込まれた表がある。サンプルの木を数本決め、枝の長さや実を結んだ枝の数、収量などを細かく記録。ブドウが成長するペースや、品種ごとの特徴が一目で分かる。「実をならせすぎた翌年の収量は減る。一定のペースを守るのが大切」。その特性が分かるまでに10年を要したという。

 手探りで始まったブドウ栽培を支えたのは、株式会社神戸ワイン(現・神戸みのりの公社)との間で結んだ全量買い取り契約だった。

 「仕込めば仕込んだだけ、ワインは売れる」

 右肩上がりの消費動向に裏打ちされた共通認識の下、農家は収穫量を増やすことに全力を挙げ、同社もそれを後押ししていった。

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 ワイン消費が伸び続けた20世紀後半で、もっとも大きな波が97~98年の赤ワインブームだった。赤ワインに含まれるポリフェノールの健康効果が着目され、98年の国内消費量は約30万キロリットルまで急伸。96年からの2年で、およそ倍の量に膨れ上がった。

 同公社で営業畑を歩き続けたワイン事業部長、大西省三(61)もその熱気を肌で感じた一人。当時、ハーバーランドにあった営業所では、問屋から在庫を問い合わせる電話が引きも切らず鳴り続けたという。「在庫がないと注文を断り続けた。問屋からはよく『なんでうちに入れへんの』と怒られた」と振り返る。

 しかし、「ブーム」は短命に終わる。99年以降、満ち潮が引くように消費量は減少。生産を拡大していた同社も大量の在庫を抱えることになっていった。

 神戸ワイナリー、苦しみの時期である。(敬称略)(伊田雄馬)

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