兵庫最大の繁華街、夜は別の“顔”に 金曜日の交番に密着 神戸

車とミニバイクの事故処理をする交番勤務員ら=神戸市中央区下山手通2

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 地域住民の安心安全を守る交番の「おまわりさん」。街頭犯罪では初動捜査の要を握り、住民から寄せられるあらゆる相談に日夜対応する。デスクワークから、緊迫の瞬間まで…。8月下旬の金曜日、兵庫県内最大の繁華街を管轄する県警生田署生田前交番(神戸市中央区)に密着した。(津田和納)

■午前9時

 同署会議室には制服姿の地域課員約30人が集合。沼田百合子課長(41)がてきぱきと指示を出す。「命に関わる人身安全事案には妥協しない」「金曜日なので、事案が多発するかもしれない」「指示や報告をしっかりと」。課員らの背筋が伸びた。前日の勤務者と引き継ぎを済ませ、同交番の勤務員が署を出る。24時間勤務の始まりだ。

■午後1時

 勤務員らは電話対応や、駐車許可車標章の交付に大忙し。突然、通行人の男性が「おーい、そこの交差点でミニバイクと車がぶつかっとんぞ」と叫ぶ。勤務員2人が飛び出して行った。

 事故現場では、足をけがしたミニバイクの女性を救護。交通整理を行いつつ、駆け付けた同署交通課員と連携して処理に当たった。

 勤務員を束ねる河原順雄ブロック長(39)によると、同交番では落とし物や地理案内といった来所が多いという。ただ、「繁華街の近くですから、酔っぱらいの暴行や傷害事件、無銭飲食も多いです。夜はまた違った顔になりますよ」

■午後8時

 「花の金曜日」を満喫しようと、通りは酔っぱらいと、客引きの店員でごった返していた。

 4年目の小林龍哉巡査(22)は交番内で書類とにらめっこ。小柄だが災害時には広域緊急援助隊員として活躍した。昨年7月の西日本豪雨では宍粟市の現場に出動した。「濁流の中、住民を救出した時は本当に命掛けでした。交番勤務もいつどこで何があるか分からない。緊張の連続です」と汗ばんだ手を制服で拭く。

 「一方通行の道で、車が出られないとの苦情通報」と、勤務員が肩に付けた無線が一斉に告げる。雨の中、小林巡査らが傘も差さずに現場へ向かった。

 四方を囲まれ、出られない車を発見。運転手に話を聞いていると、無関係の男性が「何しとんじゃい!」と大声でまくし立てる。酔っている様子。小林巡査が先頭に立ち、「対応しているので。車と関係ないなら、後で話聞きますね」と丁寧に答えると、男性は「ご苦労さんやな」と言って去って行った。

 「どんな時も平常心」と小林巡査。

■午前1時

 終電がなくなり、街中の人の姿もまばらに。交番では新人の坂本響巡査(20)が、「分からんことは、すぐに聞いて覚えなあかん」と先輩から指摘を受けていた。まだ勤務は8回目。「酔っぱらいに怒鳴られただけでひるみそうになります」と肩を落とす。

 憧れの刑事になるため、福岡県から兵庫県警を目指した。中学から柔道で鍛えた体力が持ち味だが、「まだ手錠を掛けたこともないし、血も見たことない…」

 間もなく無線から「血だらけの人が倒れている」と一報。坂本巡査らが現場で対応し、救急隊に引き継ぐ。交番に戻ると、今度は東門街でのけんかに出動する場面に遭遇。緊張が走る。

 「オラ!」「コノヤロー!」と若い男2人が怒鳴り合う。ふいに1人が「おまわり! 俺のことなめてるやろ」と叫び、坂本巡査の胸ぐらをつかもうとするが、巡査は相手の手首をひねって制圧。話を聞こうとするが、1人は逃亡を試み、1人は大声で怒鳴り出す始末。なだめ、落ち着かせて、事態の収拾を図った。

 騒ぎは、傷害事件として現在も捜査中。「キツイと思うこともあるけど、先輩たちがかっこ良くて。その背中について行きたいと思わせてくれます」と小林巡査。「早く一人前になりたいです」と誓う目は決意に満ちていた。

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