切るまで分からなかった「蜜入り」リンゴ、遺伝子から予測…栽培の効率化にも期待

 特定の遺伝子の有無から「蜜入り」のリンゴになるかどうかを予測する技術を開発したと、農研機構や千葉大、青森県産業技術センターの研究グループが発表した。遺伝子情報を調べる「DNAマーカー」を使って蜜の発生を左右する遺伝子が含まれているかを確かめる仕組みで、幼い苗の段階で蜜の入りやすさが分かるという。

リンゴ

 蜜の有無はリンゴを切ってみるまで分からなかったことから、蜜入りの品種の効率的な栽培につながると期待される。

 研究では、まず2700個を超えるリンゴの遺伝子を解析し、全部で17本ある染色体のうち14本目に、蜜に関わる遺伝子が含まれる領域があることを特定した。さらに、この領域にある計775の遺伝子の中から、蜜に影響するとされる遺伝子「MdSWEET12a」を突き止めた。

 この遺伝子の有無を調べられるDNAマーカーを開発して試したところ、遺伝子を持つと判定されたリンゴの約9割で蜜が確認できたという。

 研究の背景にあるのが、リンゴの通年供給の拡大に向けた期待だ。

 蜜入りの品種は時間の経過によって蜜の部分が変色し、商品価値が下がる欠点もある。事前に蜜の有無が把握できれば、収穫後すぐに食べるのに適した蜜入り品種を安定的に作ることができるのに加え、長期保存向けの蜜なしの品種も計画的に生産できる。

 ただ現状では、栽培環境による影響を完全に 払拭ふっしょく するのは難しいという。結果的に果実の3~4割ほどにしか蜜が入らないリンゴも、DNAマーカーでは「蜜が入りやすい」と判定される。農研機構の担当者は「安定的に蜜が入るリンゴを選別できるようにするのが課題だ」と話す。

 DNAマーカーはリンゴと同じバラ科の果物への応用も期待される。例えば梨には蜜が入ることで果肉が軟らかくなりすぎる「蜜症」があり、原因は明らかになっていない。DNAマーカーを活用して蜜が入る仕組みを解明できれば、蜜症の解決につながる可能性もある。

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