旧暦基準の「中秋の名月」、2033年には決まらない恐れ…専門家「2回祝ってもいいのでは」

 9月17日は、旧暦8月15日の「中秋の名月」にあたる。約10年後の2033年、この名月の日取りが誰にも決められない事態が起きるかもしれない。「旧暦2033年問題」と呼ばれる旧暦のルールが引き起こす現象で、専門家は「この機会に日本の文化を支える暦の仕組みについて知ってほしい」と話している。

横浜港の東の空からのぼる中秋の名月(17日午後5時42分、横浜市中区で)=上甲鉄撮影

 国立天文台などによると、旧暦は、江戸時代後期の1844年(天保15年)に導入された「天保暦」をベースに作られた。

 旧暦では、月の満ち欠けの周期に基づき、新月から満月を経て新月に戻るまでを1か月と区切る。ただ、その周期は一定ではなく、1か月は平均29・5日、1年は約354日となる。

 一方、季節は、太陽の動きに基づいて区分した「 二十四節気にじゅうしせっき 」を基準にして決まる。二十四節気を、さらに12に区切った「 中気ちゅうき 」のうち、春分を含む月は2月、夏至を含む月は5月、秋分を含む月は8月、冬至を含む月は11月と優先的に割り振り、他の月を決めるルールになっている。

 ただ、旧暦の日付と実際の季節にずれが生じるため、約3年に1回の間隔で中気のない月を「うるう月」として挿入し、ずれを調整している。

 これらの旧暦の仕組みが「2033年問題」を引き起こす。

 月の満ち欠けの周期に基づく1か月が平均29・5日なのに対し、中気と中気の間隔は平均30・4日ある。33年から34年にかけて、この誤差が原因によって、新月と新月の間に中気が入らないケースが3回、1か月の間に中気が2つ入るケースが2回発生し、旧暦の月をうまく割り振れなくなる。

 旧暦が太陽の詳細な動きなどに対応できないためで、秋分を含む月(本来の旧暦8月)と冬至を含む月(同11月)の間隔が本来は2か月必要なのに、1か月しかなくなる。そのため、秋分か冬至を含む月のどちらか片方を優先して決め、もう片方をずらす必要がある。

 しかし、旧暦は既に廃止されている暦で、どちらにするか誰も決められない状態だ。天保暦が導入されて以降、初めて起こる事態という。

 カレンダー業者や研究者などで作る「日本カレンダー暦文化振興協会」は、冬至を重視して秋分を含む月を旧暦9月にずらす対応を推奨している。その場合、旧暦8月15日にあたる中秋の名月は新暦で9月8日になる。逆に秋分を重視した場合は、中秋の名月は10月7日になり、2通りの日付が存在する事態になる。

 ただ、既存のルールでは解決策がないため、同協会の小沢潤事務局長は「他の解釈を否定するものではない」と指摘する。国立天文台の片山真人・暦計算室長は「両方ともに名月たる資格がある。2回祝ってもいいのでは」と話している。

 中秋の名月には、お祭りや神事を行う神社もある。こうした行事の日付をどうするのか、33年が近づくにつれ、対応を迫られるかもしれない。

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