〈少子化なのに児童数爆増〉スゴすぎる港区新設の高層小学校…「ボルダリング」の最新設備にプロ野球選手による体育の授業も

少子化が進み、学校の合併や閉校のニュースを耳にすることが増えた。その一方で、タワーマンションが建設される地域周辺では「教室が足りない」状況になっているという。26年ぶりに東京・港区に新設され、開校から2年が経った「芝浜小学校」の校長に話を聞いた。

【画像】JR田町駅に直結、次世代の小学校として注目を浴びている東京都港区の芝浜小学校

タワマン増加地域で「教室が足りない」

生徒が多すぎて小学校の教室が足りない……。

こんな光景を昭和・平成のテレビ映像で見たことがある人も多いのではないだろうか。

少子高齢化が進んだ令和の現在では幻だと思うかもしれない。しかし、現在でもこんな光景が広がる場所がある。

そのひとつが、埼玉県さいたま市南区にある武蔵浦和。武蔵野線や埼京線が乗り入れるこの駅周辺では大規模な再開発が進められており、8棟のタワーマンションが建設されている。これによって若い世代が大量に流入。

駅周辺にある5つの小学校のうち、1つは全校児童数が1200人に達し、クラス数は40になる。これは国が求める小学校定員の基準値を大幅に超えている「過大規模校」(一校あたり31学級以上)。まさに「教室が足りない」状況が起こっている。

こうした課題を解決するもっとも手っ取り早い手段は「小学校の新設」。

実際、タワマンの増加とそれに伴う子どもの人口増加に伴って、小学校を新設した事例もある。

東京都港区芝浦。臨海部にタワーマンションが林立し、“高所得者層の象徴”のようになっているこの街に、26年ぶりとなる小学校が誕生した。

その名も芝浜小学校。JR田町駅から歩行者用デッキで直結している校舎は9階建て。小学校も「高層化」しているのがおもしろい。中には温水プールや屋上運動場、ボルダリングウォールなどの屋内施設も充実していて、次世代の小学校として注目を浴びている。

芝浜小学校が開校したのは2022年。この近隣には「芝浦小学校」があったが、港区の海岸地区の子どもの人口が急激に増えたことにより、定員を大幅に超えてしまった。2010年度には550人だった児童数が、2022年度には1255人になったのだ。

そこで新設されたのが、この芝浜小学校である。

背景には、港区の急激な人口増加がある。同区はタワーマンションなどの増加により、人口増加の一途をたどっている。都が発表している「港区人口ビジョン」によれば1996年からこの増加傾向は続き、1996年からほぼ2倍近い人口に。また、人口推計によれば、年少人口だけでも今後10年で5000人近くの増加が見込まれている。

26年ぶりの小学校新設ということもあって、芝浜小学校は開校時に大きな注目を浴びたが、それから2年、実際に学校の運営はどのようになっているのだろうか。

同校の宮﨑直人校長によれば、創立時の児童数は377名だったのに対し、2024年度の児童数は644名。たったの2年で1.7倍の増加である。

全国平均では、毎年1.5%ずつ児童数が減少しているのが現在の日本の小学校だ。それとは正反対の推移をたどっていることになる。

彼らの通学手段は徒歩であり、周辺のマンション増加に伴った結果といえる。

港区ならではの「新しい小学校像」

一方で宮﨑校長は増加に伴っての課題も指摘する。

「学校の規模が年々大きくなる中で、学習面でも生活面でも、昨年度の活動と同じように実施しようとしても必ずしもうまくいかなくなりました。学校の規模に応じて教育活動の実施方法を毎年工夫する必要があります」(宮﨑直人校長、以下同)

小学校の新設は、なかなかないこと。イチから小学校を作るだけでも大変だが、そこに児童数の急増が加われば当然、「例年の繰り返し」ではいかなくなる。そんな中、同校はどんな取り組みをしているのか。宮﨑校長が続ける。

「本校は、開校以来、『地域とともにあり、地域に開かれた学校』を目指し、地域の方々との交流活動や地域の施設を活用した学習、企業と連携した教育活動を行なっています」

学校周辺にある施設と連携した授業はもちろんのこと、港区に所在地を置く東京ヤクルトスワローズの元選手などを招いた体育の授業や、同じく港区に本社があるTBSを招いた社会科の授業など、港区ならではのラインナップがずらりと並ぶ。

新しい小学校だからこそ、より一層、地域や周辺企業との連携を深めていく必要があると考えているのだろう。

タワマンに囲まれ、周辺にさまざまな施設が密集する中にある小学校は、これまでのような「住宅街の中の小学校」と同じようにはいかない。よって、新しい地域との連携や企業との連携を模索している途中だ。

PTA問題を解決する「はまさぽ」

また、地域との連携でいえば、「はまさぽ」(芝浜Kidsサポーターズ)と呼ばれる芝浜小学校のPTA団体も学校・地域からの依頼に応じる形で学校と地域をつなげる役割を果たしている。活動としては、地域でのお祭りや校内イベントの手伝いなどを行っている。

しかし、従来のPTA組織とは異なる点もある。「はまさぽ」会長の柳澤紀子氏が言う。

「『はまさぽ」は『できる人が、できるときに、できるる力を少しずつ』というコンセプトで、役員の強制なしで、学級代表などもありません。完全立候補の本部役員のみで運営しています。ご協力いただく保護者の皆様は、一切の強制なくご自分のご都合が合うときに選んで来ていただいています」

さまざまな人が住み、人間関係のあり方も変わりつつある都市部では、これまでのように「強制参加」のPTAでは立ち行かなくなる。従来よりもゆるやかな組織にすることで、持続可能なPTAを目指しているのだ。

本記事で触れた港区の事例は極端な事例かもしれない。しかし、タワマンによる人口集中が今後も続いていくことを考えたとき、芝浜小学校の取り組みは今後の都市部での小学校のあり方に対して、1つの示唆を与えてくれるのではないだろうか。


取材・文/谷頭和希

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