安部若菜 エッセイ連載「私の居場所は文字の中」/第7回「普通は嫌だ」
中学生の頃、「普通」であることが何より恐怖でした。
友達のあの子はあんな特技がある、あの子は明るくて、あの子は勉強が図抜けていて……。じゃあ、私は?
振り返ってみれば、今も昔と変わらず同じようなことで悩んでいます。
かといって普通から外れるのは怖くて。
中学では陸上部でしたが、人数の関係で、砲丸投げ・円盤投げが専門種目でした。それも立派な競技なのに、当時は短距離や長距離と“普通”の競技でないのが無性に恥ずかしく感じていました。
大阪府で入賞するくらいには本気で円盤投げに打ち込んで大好きな種目だったくせに、普通が嫌いなくせに、
美容室で「陸上部なんだ!短距離とか?」と聞かれたときには嘘で「短距離です」と答えたり、クラスメイトに練習風景を見られるのを照れたり、
中途半端で情けない中学時代でした。
中学の頃と現在で唯一違うのは、人と違うことを楽しめるようになったことです。
でもそれは今が「人と違うのが良い」と肯定してくれる空間で、安心して羽を伸ばせるから。
「個性を大事に」なんて小学校では教えられていたのに、人と違えば違うほど褒めてもらえる居場所は、意外と少ない気がします。
小説『私の居場所はここじゃない』の登場人物の1人、“純平”も私と同じく普通を嫌う高校生です。特別でありたいと願いながらも、元から特別な存在の輝く人たちに圧倒され、妬み、自分を卑下して、でもやっぱり自分も特別になれるはずなんだと奮起します。
純平は特に近しいところを感じる1人で、次作の中で1番何度も書き直し、時間をかけた人物でもあります。
誰かに打ち明ける訳ではないけど秘めている「特別になりたい」という想い、そして挫けそうになる弱さに正直な純平が愛されるキャラクターになれば嬉しいです。
表紙も公開され、発売も近づいてきた次作をよろしくお願いいたします!
安部若菜の最近読んだ本
佐原ひかりさん『スターゲイザー』
アイドルを題材にした1冊。私自身も『アイドル失格』とアイドルをテーマにした小説を出していますが、こちらは全く毛色が違い、デビュー前の男性アイドルを題材にした物語です。
数ページ読んで「これは読んだことがないジャンルの作品だ…!」とすぐに引き込まれました。6人の男の子たちのキャラクター性が特に魅力的で、読み進めるごとに1人ずつ好きになっていき、最後には箱推しに。
展開もダイナミックで、先の読めなさにワクワクし続け、光に包まれたアイドルらしいエンターテイメント性に溢れていました。
何より、アイドルの解像度の高さに驚きました。同じアイドルといえど性別も違うので私の属するNMB48とは違う点ばかりですが、アイドルとして共感する部分も多く、楽屋でメイクをしている細やかな場面など、「こんな会話ある…!」とアイドル側にも刺さる物語でした。かなりファン側も刺しにきていると感じる部分も多かったので、推しのいる方の反応が気になる作品です。
11/22 18:00
ダ・ヴィンチWeb