“豊かな耳”をもつ「豊聡耳」と呼ばれた歴史人物は誰? 偉大な僧侶たちの人生と教えを学べる図鑑

『日本を変えたすごい僧侶図鑑』(蓑輪顕量:編著、東京大学仏教青年会:著/産業編集センター)

 日本には156の仏教宗派(2021年末時点)が存在しているという。飛鳥時代から近現代まで脈々と継がれている日本の仏教文化を支えてきたのは僧侶たちだった。

 彼らにスポットを当てた『日本を変えたすごい僧侶図鑑』(蓑輪顕量:編著、東京大学仏教青年会:著/産業編集センター)では、50名もの僧侶を掲載。それぞれの「人生」と併せて、彼らが残した「教え」とは何かを分かりやすく学べる。

 時代ごとに活躍した僧侶を一覧できる「僧侶年表」を見ると、これほどまでに多くの僧侶がいたのかと驚く。「鑑真」や「空海」、「親鸞」といった歴史の教科書で見たことのある名前も並んでいる。

 本書では飛鳥時代から昭和時代まで、時代を追って数々の人物を紹介していく。トップバッターは「初めて仏教を本格的に日本に導入」したという、かの有名な聖徳太子だ。

 デフォルメされた愛着あるイラストと共に、プロフィールとして「出生地」などを紹介。6世紀末から7世紀初頭の「大陸から仏教が伝わり、定着していく時期」にかけて活躍した聖徳太子は能力によって身分を分ける「冠位十二階」制度や、朝廷で働く官人(役人)たちの心得である「十七条憲法」などの功績を残した。

 本書で新たに学んだのは、彼の教えだ。「万善同帰」は“どのような些細な善行であっても必ず悟りという結果に至る”という意味の言葉。生前、聖徳太子は仏教が社会の中で大事な価値観を提供するものであると示しつつ、人々へ暗に「真面目に働きましょう」と伝えるべく、この言葉を説いた。

 また、聖徳太子は大勢の声を聞き分けられたとする逸話もあるが、本書によれば10人(8人という伝承も)のお願いをいっぺんに聞き違えることなく理解することができたという。「豊かな耳」を持ち人の話を聞き分けて理解することができる聡明さを併せ持っていたことから「豊聡耳(とよさとみみ)」とも呼ばれていたようだ。

 このような流れで50名もの僧侶を、次々と紹介していく本書。仏教における「学問」と「修行」をきわめた僧侶たちによる興味深い教えの数々から、生きるためのヒントもきっと見つかるだろう。

文=カネコシュウヘイ

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