「やばい」で会話を済ませてない?154種類の感情表現を子どもと学べる『きもちのことばえほん』

『伝える力が身につく!きもちのことばえほん』(金田一秀穂:監修/日本図書センター)

 自分だってたいして言葉遣いが良いわけではないのに、子どもが「やばっ!」とか言っていると気になってしまう……。この気持ち、わかっていただける方も多いのではないでしょうか。

 なんでもかんでも「やばい」で済ませるのではなく、自分の気持ちを適した言葉で表現できるようになってほしい。そう思っている方におススメなのが『伝える力が身につく!きもちのことばえほん』(金田一秀穂:監修/日本図書センター)です。

 監修した金田一秀穂さんは著名な言語学者。「うれしい・たのしい」「かなしい・おこる」など、身近な感情を7つのジャンルにわけて、それぞれ22の言葉を紹介。言葉の意味と使い方を教えてくれます。

 例えば「うれしい・たのしい」では“よろこぶ”というシンプルなものから“きょうきらんぶ”という四字熟語、“天にものぼる心地”という慣用句まで、多岐にわたる言葉が紹介されます。

 本書の対象年齢は5~9歳。我が家の幼稚園年長と小2男子はどちらも対象なので、早速3人で読んでみることに。絵本とはありますが、お話部分は冒頭のみ。あとはどちらかというと辞書のような体裁なので「楽しめるのかな?」と正直読む前は不安でした。

 しかし実際に言葉の紹介ページにさしかかったら、「先生に褒められてご機嫌!」「じいじとばあばの家に行くからわくわく」と自分で文章を作ってみる遊びが早速スタート。もちろんすべてではありませんが、知っている言葉、理解できる言葉を自分のものにしていく様子に「子どもの吸収力ってすごいんだなあ」と改めて感心してしまいました。

 この本に登場する154種類すべての言葉にイラストがついていて、かわいいイラストで視覚的に理解できるのも子どもたちが理解できた理由のひとつだったようでした。

 冒頭のお話部分には「『きもちのことば』を知っていると自分の気持ちが伝えやすくなったり、相手の気持ちがよくわかったりできる」とありますが、語彙が多いことの利点はまさにそれ。

 私自身、特に若い頃は友達同士「やばい!」で盛り上がったこともありますし、あえて詳細を語らないことで生まれる連帯感やテンポ感の楽しさも理解できます。でも世代や境遇の違う人には「やばい」だけでは伝わらないこともあるし、自分の気持ちを詳細に表現することで生まれる共感もまた嬉しいものです。

 語彙力・表現力・思考力・コミュニケーション力がぐんぐん伸びる絵本として紹介されている本書。自分の気持ちをより具体的に伝えることで生まれる楽しさを、ぜひ親の言うことに耳を傾けてくれるうちに(!)知ってもらいたいなと思ったのでした。

文=原智香

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