〈横浜・ラーメン店店長殺人〉「ラーメン屋が天職」という被害者と「職に就かずフラフラしていたところを拾われた」容疑者…親族が語る二人の関係「経営も順調で愚痴を聞いたこともない」

横浜市港南区の京急・上大岡駅近くの人気ラーメン店「らーめん弘」で起きた殺人事件。店長で被害者の大橋弘輝さん(33)と、殺人容疑で逮捕された親族で従業員の大橋昭仁容疑者(35)の間に何があったのか。一杯500円という格安でラーメンを提供できた「秘密」も含め、被害者の従兄弟が涙ながらに切々と語ってくれた。

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昭仁容疑者は「ちょっと欠けているようなところが見受けられる」タイプ

9月17日夜、同店の前で落涙し、長時間手を合わせていた男性に取材班が声をかけると、弘輝さんの母方の従兄弟だった。途中、何度も嗚咽で声を詰まらせながら、男性は最後まで真摯に取材に応じてくれた。

この親族は水道や配管の工事を手掛ける職人で、同店が開業する際も水回りやエアコン設置を担当したという。男性によれば、弘輝さんの祖父は約60年前に神奈川県内で製麺所を創業し、父は同製麺所の役員を務めながらラーメン店を経営と、文字通り、ラーメン屋が「天職」のような男だったという。

「弘輝はほんとにラーメンが好きで、よく食べ歩いたりしてました。高校を出てからしばらくはたしか貴金属やブランド品の買い取りをする会社でサラリーマンをしていたんですが、その後に横浜家系の有名なラーメン店で数年間、修行をして独立した感じです。彼には僕と同い年の兄がいて、幼いころからお揃いの服を着たり、家族ぐるみで旅行に出かけるような関係でした」

一方の昭仁容疑者の人となりについては「変わっていた」という。

「昭仁は、ちょっと欠けているようなところが見受けられるタイプではありました。結婚式で親戚が久しぶりに一堂に会したときには、みんなで挨拶したり、おめでとうと言い合ったりしますよね。ところが昭仁は、そういうときでも平気で本を読んでいたと僕の母親から聞いたことがあります」

いったい、どういう経緯で、弘輝さんのラーメン店を手伝うようになったのだろうか。

「職にも就かずフラフラしていたところを、弘輝の母親が『だったら店をやらないか』と声をかけたと聞いています。開業後すぐではなく、少し経ってからだったと思います」

弘輝さんが2つ年上の昭仁容疑者を「アキヒト」と、昭仁容疑者は「店長」や「ヒロキさん」と呼び合っていたが、それも自然な感じで、二人の関係が険悪に見えることはなかったという。

「僕が工事に来ているときには二人から仲が悪そうな雰囲気を感じたことはありませんでした。弘輝からも『味に変わりがないかチェックしてほしい』と頼まれたので、その後も月1回くらいは店に行ってましたけど、弘輝が昭仁についての愚痴を漏らしたこともなかったです」

ゆくゆくはフランチャイズ化を目指していた弘輝さん

男性が最後に弘輝さんと会った1カ月ほど前も、経営も順調で何かに悩んでいるような素振りはなかったという。

「まあ、この一等地でやってるし、安さも売りでやってましたし。実家が製麺所というアドバンテージはあったでしょう。この味を作るには500円じゃとても無理だというのは食べればわかりますから。ただ、いつも500円だったわけじゃなくて、『新規のお客さんを獲得するためにセールをしている』と言ってました。材料もすごくこだわっていて、チャーシューを作る機械も何百万円もするのを入れていましたし、そういう努力の中で1杯500円を絞り出していたんで」

弘輝さんは、ゆくゆくは店舗のフランチャイズ化を目指していたという。

「3店舗から5店舗くらいは出したいと言ってましたね。いずれは昭仁に店舗を任せるつもりがあったかどうかまでは聞いてませんが、弘輝本人は『俺もいつまでもキッチンに立てないから、なるべくチェーンにして味を継いで欲しい』と夢を語っていました」

15日の金曜日も弘輝さんが昼の営業を終え、昭仁容疑者が午後6時に夜の部を開店するはずだった。しかし、弘輝さんの母親が様子を見に来た午後7時20分ごろ、店のシャッターには「臨時休業」の札が下げられ 、昭仁容疑者の姿はなかった。

「昭仁の担当時間は夕方6時から深夜1時なので、通常なら午後4時台には店に来てスープの準備をするか、もしくは弘輝が夜の分のスープを作ってる最中に昭仁が来るか。店内のカウンターはL字で手前に2席、奥に8席くらいで、L字の角にウォーターサーバーが置いてあって、弘輝はそこに倒れていた。おそらく午後3時から5時ぐらいが(犯行)時間じゃないかなと思います 」

どうしてきいちゃん(弘輝)が殺されなきゃいけなかったんだろう

弘輝さんは怒鳴り声をあげて激昂するようなタイプではなく、また、昭仁容疑者も粗暴なところはなくどちらかといえばおとなしかったという。

「弘輝は性格上、(注意するときも)冗談半分じゃないですけど、スキンシップを図りながら『ちゃんとやってくれよー』っていうタイプだったと思います。愛情は絶対持ってます。気前がいいというか、彼のことを身近に知る人間として、そういうような怨みを買う人間ではなかったと思ってます。

昭仁についても悪い印象はなかったので、疑いながらもどこかで『昭仁じゃないでしょ』とも思ってました。弘輝の母親が見に来たときに昭仁がいなかったのは間違いない証拠なんで、逮捕のニュースを見て『やっぱりな』と思ってしまいました」

第一発見者が母親で、相当なショックを受けているのは間違いない。

「弘輝は昭仁と交代すると真っ直ぐ家に帰るんで、毎日午後5〜6時には帰ってるんですよ。遊ぶこともないし、子どももいるし、すごい真面目なんです。だから奥さんが弘輝が帰ってこないし連絡つかないから、すぐに母親に連絡したと思うんです。(第一発見者が)子どもじゃなかったことだけが、救いである気がします」

仲のよい従兄弟が惨殺され、犯人として親族が逮捕されるという衝撃の結末を、男性は容易に受け止めきれずにいる。

「昨日も現場に来たんですけど、規制線を張られて入れなくて、大通りのところから手は合わせました。今日、改めて手を合わせて、どうしてきいちゃん(弘輝)が殺されなきゃいけなかったんだろうという悔しさが一番ですね。僕の母も兄弟もずっと『なんできいちゃんなんだろうね』ってずっとそんな感じだったんで。うちの母なんかはずっと息子のように可愛がってたんで今も気が動転しています」

スープ仕込みの現場でどんなやりとりがあったのか。激しい抵抗の痕を残した弘輝さんは腹や背中をメッタ刺しされて失血死し、血まみれの床には凶器とみられる包丁が転がっていたという。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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