高橋ヨシキが映画『アビゲイル』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 身代金目当てに誘拐した少女は"踊る吸血鬼"だった!?

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『アビゲイル』

評点:★2.5点(5点満点)

© 2024 Universal Studios


© 2024 Universal Studios

アイディアは抜群だが攻防戦が反復的

身代金目当てで誘拐した少女がヴァンパイアだったら?というアイディアは抜群だ。誘拐チームが互いの素性も本名も知らず、それゆえ信頼関係が構築できない、という状況も良い。

また、身代金の受け渡しまで少女を閉じ込めておくために用意された屋敷に仕掛けがあって、気がついたら全員が監禁状態で脱出できない、という展開も素晴らしく面白い。誘拐チームの面々のキャラクター造形もユニークだ。

惜しいのは、脇を固めるチームが際立った個性の持ち主ばかりなのに反して、その一員たる主人公のキャラクターが薄味で、とりたてて魅力が感じられないというところにある。

この「濃いメンツの中で主人公が一番ジェネリックな人物になってしまい埋没してしまう」という現象は比較的よくあることで、あまりエキセントリックな人物は「共感」を得られないかもしれない、という想定がそういう事態を招くわけだが、実際は逆で主人公はもっともっと型破りな方が面白くなったはずだ。

キャラクター同士の掛け合いや展開はテンポ良く、楽しく観ることができる作品ではあるが、ヴァンパイアとの攻防はワンパターンで反復的に感じられるし、意外性のあるゴア描写に乏しいのも残念。

STORY:5000万ドルの身代金を手に入れるため、大富豪の娘を誘拐した犯罪グループ。だがこの少女、実はバレリーナ・ヴァンパイア(踊る吸血鬼)! 人質ではなく誘拐犯が監禁されることとなり、恐怖の一夜が幕を開けるのだった

監督:マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット
出演:メリッサ・バレラ、ダン・スティーヴンス、キャスリン・ニュートンほか
上映時間:109分

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