通崎好みつれづれ とっておきの一軒

このお店の味を体験するまで、「フルーツのカクテル」は、お酒に弱い人がとりあえずオーダーするもの、というイメージを持っていた。このお店とは「Islay Mojito」(京都市中京区)、アイラ・モヒートと読む。ウイスキーの聖地「アイラ島」で作られるアイラウイスキー、キューバで生まれたホワイトラムベースのカクテル「モヒート」、マスター・バーテンダー、藤澤泰和(ふじさわ・ひろかず)さん(63)の好きなもの2つを並べた名前だ。

同店のフルーツカクテルは、しっかりお酒を楽しみながらも、果物の酸味や甘みをそのまま食べる以上に深く味わえるという不思議なもの。スタンダードなカクテルも、ひと工夫、ふた工夫凝らしたここでしか味わえない個性的なものばかり。例えば、モヒートは3種類の砂糖を使い分け、通常の6倍のライムを入れて、ソーダを一滴も入れずに作る。何より面白いのは、時間がたっても味が薄くなるどころか、深みが出ることだ。

その秘密は氷にある。

藤澤さんは、大学時代から飲食店でアルバイトをしていた。売り上げを伸ばし、学生にもかかわらず店長を任されるようになる。卒業後も飲食の世界で働き26歳で独立。40代になると数軒のバーを持つ経営者となった。しかし、体を壊して一度店を清算。50代、身一つ、再スタートを切ることになった。その時に着目したのが「氷」である。

自身で氷を作り、時間をかけ管理することによって極度に溶けにくく、割れにくい、なぜか溶けても水くさくならないという稀有(けう)な氷を創り上げた。この氷の特性を生かして作られるカクテルは、まさに絶品だ。

この店のもう一つの看板、シングルモルト・スコッチウイスキーも、すでに閉鎖された蒸留所、幻のアイラモルトとよばれる「ポートエレン」など、珍しいものをそろえている。オークションや信頼できるボトラーズから仕入れる。なくなったら、すぐに補充できるようなものはほぼない、という。

心からお酒が好きな人にお勧めしたい店だ。(通崎睦美 木琴奏者)

「Islay Mojito」(075・254・7883)は要予約、喫煙可。

つうざき・むつみ 昭和42年、京都市生まれ。京都市立芸術大学大学院修了。マリンバとさまざまな楽器、オーケストラとの共演など多様な形態で演奏活動を行う一方、米国でも活躍した木琴奏者、平岡養一との縁をきっかけに木琴の復権に力を注いでいる。執筆活動も手掛け、『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』で第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)と第24回吉田秀和賞をダブル受賞。アンティーク着物コレクターとしても知られる。

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