政府の緊急事態宣言 今後の方針は

【我流~社会部発】「批判ありき」ワクチン報道に異議

「巧遅(こうち)は拙速にしかず」という言葉がある。出来がよくても遅いのであれば出来が悪くても速いほうがよいとして、物事は素早く行うべきだという意味で使われる。「未曽有の災害」である新型コロナウイルス禍への対応はかくあるべしと思うのだが、拙速なこと自体を批判する記事を目にすることがときどきある。対象が拡大しているワクチン接種もそう。菅義偉(すが・よしひで)首相が「1日100万回」とぶち上げたことをシニカルに解説する向きもあるが、希望者の接種につながることこそが大切なのではないか。

ワクチン接種をめぐっては5月、高齢者向け接種が7月末までに完了する見込みが全国の市区町村の86%との調査結果が公表されたが、「完了できない14%にこそ注目すべきだ」と感じた。そのころ、筆者の高齢親族が8月にならないと接種できない見込みだったので、そのせいもあったと思う。だから、「14%」について「報告を受け、ショックだった」と述べた首相に「いやいや、世の中大変なんですよ」と心の中で突っ込みを入れた。

本紙のコロナワクチンの疑問・質問募集にも読者から「7月末完了は可能なのか」と懐疑的な声が寄せられた。政府はこうした意見を真摯(しんし)に受け止め、改善につなげる必要がある。ただ、本質を見誤ってはいけないとも思う。コロナは有事でもあるのだ。現場に耳を傾けながらも、しっかりと目標を掲げ、強いリーダーシップで前に進もうとする姿勢は「是」としたい。

緊急事態宣言の度重なる発令と長期化に国民の我慢は限界を超えている。ワクチンが「コロナ対策の切り札」ならば多少拙速でもあらゆる手立てを講じるべきだ。もちろん接種するかどうかは個人の自由である。また、本紙報道でも指摘しているが、数字ありきで「完了」の定義を操作するとしたら本末転倒だ。

国が職域接種を可能にする方針を明らかにした際には、「唐突過ぎる」と批判的に報じたメディアがあったが、慎重に調整を重ねて時間を要するよりはましだろう。実際、職域接種は手を挙げる企業や大学が相次いだ。

最近では、政府が設置した大規模接種センターの予約に大幅な空きが出ていることを揶揄(やゆ)するような記事もみられた。高齢者が都心に足を運ぶことを敬遠したこともあろうが、接種が順調に進んだ結果ならば結構なことではないか。空きがあればそれだけ接種対象を拡大することもできる。

批判のための批判になっていないか。自分自身も胸に手を当てつつ、日々の編集に携わっている。(社会部次長 真鍋義明)

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