【スポーツ・健康のいま】チーム導くリーダーの言葉

 どんなに周りがうるさくても、気になるあの人の声は不思議と聞こえる-。そんな経験はないだろうか。人は誰でも、雑多な中から自分が興味関心があるものに気づく能力をもっていて、それらの物理的な刺激から影響を受けている。スポーツチームの選手にとって、観客の大声援の中でも不思議と聞こえてくるもの。それは、監督・コーチといったリーダーたちの声だろう。

 選手にとって、良くも悪くも影響力の強い監督やコーチらは、大事な試合の前やタイムアウトの時、目標達成に向けて選手たちを鼓舞しようと、「ペップトーク」と呼ばれる、極めて力強いメッセージを送ることがある。

 そのメッセージが選手の琴線にどのくらい触れるかが、チームの雰囲気や勝敗を左右する重要なポイントになる。そして、その度合いを決定づけているのが選手とリーダーの信頼関係だ。

 信頼に支えられた関係性は、選手同士や、リーダーとの間で共感し合える状態を生み出しやすくする。信頼できるから、選手はリーダーの言葉を素直に受け入れて期待に応えようとするし、リーダーの側も、信頼する選手だからこそ、ハードな練習や多くの時間を共に過ごし、試合後には(結果に関わらず)選手をたたえ、感謝の言葉を贈るものだ。

 選手は試合後のリーダーの言葉を決して聞き逃したりはしない。信頼する存在であるリーダーが、自分たちの何を評価してくれたのか、その心の中で、自分たちがどんな存在なのかを確かめるために。

 私自身が研究室で検討を重ねているデータによれば、リーダーには、目標を実現させていこうとするパッション(情熱)が重要だ。しかしそれだけでは、選手たちに押し付けだと受け止められることもある。より高みを目指すときに必要なのは、選手が積み上げてきた努力と成果にリーダーが強く共感し、そのことを、自分にしか紡ぐことができない、独自の言葉で表現することだ。

 試合を終えたとき、節目を迎えたとき、リーダーは何を語るのか。その言葉に報われ、次に進もうとする選手がいる。リーダーの言葉と、それに影響されたチームの姿に、応援するわれわれも感動をもらうことになるのかもしれない。

 山浦一保(やまうら・かずほ) 立命館大スポーツ健康科学部教授。専門は産業・組織心理学。一般社団法人の集団力学研究所、静岡県立大などを経て、平成22年に立命館大スポーツ健康科学部准教授、28年から現職。29年にスペイン・バレンシア大学客員研究員。趣味はドライブとスポーツ観戦。

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