「聴こえ」によって「人生の幸福度」は大きく変わる。知っておいて損はない、人生100年時代に備える進化する補聴器とは?

(写真提供:photo AC)
AI機能を搭載した先進的なオーティコン補聴器の新製品の発表会が開催され、登壇した慶應義塾大学病院 聴覚センターセンター長の大石直樹先生の話を伺った。
(取材・文◎アンチエイジング美容&ヘルスコンセルジュ 鹿田真希)

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【図】補聴器、使いたくない…理由は?

「難聴」に属する疾患は、遺伝やストレス、生活環境などさまざまな要因によりもたらされる。加齢性による聞こえづらさは55歳以降急増し、65歳以上の難聴有病者は全国に約1500万人と推計される。人生100年時代を考えると、30年以上も聞こえが悪いまま生きることになる。

高齢者にとって難聴はどのようなリスクとなるのか。大石先生の解説によると、コミュニケーション障害により社会活動が減少し、それが孤立感、意欲の低下、鬱状態をもたらし、結果的に認知症を誘発する原因になるとのこと。

難聴になると、電話で会話が聞き取れない、小さな声や低音が拾えず会話が噛み合わない、会食など大人数での会話に参加できない。

背後から声をかけられても気づかずに、相手からは無視されたと気まづい状況が生まれる、容易に人と交われなくなり、ぽつんとひとりだけ取り残されたような疎外感すら生まれてしまう。

そして、家族との会話も減り、ひたすらテレビの音量が大きくなり家族に怒られ、楽しいことがなくなっていってしまう…。

【難聴のある高齢者 介入前の状態】

【難聴のある高齢者 介入前の状態】(画像提供:慶應義塾大学病院)

そんな悲しいことがあっていのかと憤るものの、これが、現在の難聴の実態であると先生は説明する。「だからこそ、聞こえが気になったら耳鼻科専門医を受診し、適切に補聴器を装用することで、前向きな人生を送ってほしい」と続ける。

しかし補聴器は、聴力に合わせて調整しても、眼鏡のように度数を調整さえすればすぐに十分に効果が実感できるような機器ではない。そもそも聴覚とは、音を集めて鼓膜まで伝える外耳、音を増幅する中耳、音の振動を電気信号に変換する内耳からなり、その電気信号が脳で理解される仕組みになっている。

難聴によって長時間十分な音声情報が届いていない脳に対して、最初から聞き取りに必要な大きな音を入れると、脳はとても不快と感じて、「うるさいだけ」と補聴器を諦めてしまう人が多いとのことだ。脳が音に慣れ、必要な音声を自然に聞き取れるようになるまで聴覚のリハビリテーションを続けることが補聴器の満足度を左右するポイントだという。

【補聴器による聴覚リハビリテーションとは?】

【補聴器による聴覚リハビリテーションとは?】(画像提供:慶應義塾大学病院)

だが、補聴器の上手な活用は生涯のクオリティー・オブ・ライフを守る強い味方になってくれることは間違いない。

『Oticon Intent(オーティコン インテント)』(画像提供:オーティコン補聴器)

そして、さらなる幸福度の高い生涯へと助けてくれるのが、この度発表されたオーティコン補聴器の先進テクノロジーだ。自分が聞きたいと意識する音を集中的に拾い脳へ届ける《じぶんセンサー》という技術を開発した。

この新技術は装用者が無意識に行う頭の動き、体の動き、会話活動、音響環境から、今何を聞きたいのかを判断し、自然にその音や会話にフォーカスできるようサポートする機能だ。騒音下など、複雑な環境下でも聞き取りの向上が期待できる。

『Oticon Intent』(画像提供:オーティコン補聴器)

例えば、音楽の演奏や大勢の人々の会話音でごった返しているパーティ会場で、数人と輪になって談笑しても各人の会話が聞き取りやすくなるという。また、指向性(一方向)ではなく、周囲360度の音をバランスよく届けるため、背後からの声も届けることができる。これまで難聴や、特に騒音下の聞こえに苦しんでいた人には夢のような先進的な技術であるかもしれない。

このような医療を支える技術の発展は、年を取っても元気で幸福に過ごせる安心感が約束される。たとえ、今はご自身に必要ないとしても、年老いた祖父母や両親を幸せにしてあげられる耳寄りな情報となるのではないだろうか。

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