本郷和人『光る君へ』病に伏した詮子のために安倍晴明の邪気払いが。伊周・隆家兄弟の召喚も決定し…なぜ「疫病を鎮めるために護摩」が当たり前になったのか

(写真提供:Photo AC)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第24話は「忘れえぬ人」。宣孝(佐々木蔵之介さん)から求婚され、さらには、周明(松下洸平さん)からも一緒に宋へ行こうと誘われるまひろ。しかし、心の内には道長(柄本佑さん)が――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「加持祈祷」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

花山院に矢を放った伊周・隆家兄弟は「左遷」。左遷先で彼らがどんな扱いを受けたかというと…

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藤原詮子が病の床に伏して

今回のお話では、病の床に伏した藤原詮子が道長に相談。安倍晴明を呼んで邪気払いをしてもらうことになりました。

さらに病の平癒を祈念した一条天皇は、大赦の詔を下すことを決意。配流となっていた伊周と隆家兄弟を都に召喚することになりました。

ここにきて、隆家が矢で狙ったのは花山院でなかったのが判明し、金田哲さん演じる斉信の思惑通りに操られていたことに道長が気づいたシーン、なかなか面白かったですね。

ということで今回は、「加持祈祷」について考えてみたいと思います。

火を使うやり方の起源

疫病を鎮めるために護摩を焚く、というのはコロナ禍でもよく見られましたし、実際よく知られているかもしれません。

本郷和人先生が監修を務める大人気の平安クライム・サスペンス!『応天の門』(作:灰原薬/新潮社)

宗教儀礼として火を使うやり方は、インド周辺に起源をもつようです。ゾロアスター教は拝火教とも言われ、火炎崇拝を宗教に取り入れていますね。

仏教もお釈迦様本来の教えには火をたく儀式はないはずですが、やがてヒンズー教から影響を受け、とくに密教で護摩を焚くようになりました。

朝廷で「絶えず護摩が焚かれている」状況になったワケ

日本の密教というと、空海の真言宗。

最澄の天台宗は本来は顕教(人間は一段階ずつ修業してやがて悟りに至る)でしたが、密教の考え方(仏典のまか不思議な功徳で悟りに至る)を取り入れますので、平安時代の仏教は密教色がたいへんに強いものになります。

なお真言宗の密教を「東密」、天台宗の密教を「台密」といいます。

ですので、朝廷の周囲では、絶えず護摩が焚かれている、という状況になりました。

護摩の種類

儀式的には、護摩壇というものを設えます。そこに火を点じ、火中に供物を投じ、ついで護摩木を投じて祈願する、という手順になります。

護摩壇は仏像とか仏画の前に置かれていますので、火の向こうに仏さまの姿が浮かび上がる、という神々しい構図になります。 

護摩の種類としては、息災法→災害のないことを祈るもので、旱魃、洪水、地震、火事を鎮める。

増益法(ぞうやく、と読みます)→幸福を倍増させる。

長寿延命、縁結び。調伏法→敵とか魔を除去する修法。悪行をおさえることが目的であるから、すぐれた阿闍梨でないとできない。

などがあります。

ちなみに疫病対策の場合は、かつては「魔」が病を振りまく、と考えられていましたから、調伏法に当たりますね。

不動明王など、悪い奴を懲らしめてくれる仏さまに祈って、疫病の「魔」を退治してもらう。それを目的として護摩が焚かれたのです。

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