【秋桜(コスモス)】本格的な秋を知らせる花。葉っぱで夜の長さをはかって、冬の訪れを2か月前に察知する

日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「【秋桜】秋の訪れを告げる花」です。

* * * * * * *

【写真】風に強い、特徴的なコスモスの葉

本格的な秋の訪れを告げる花

この植物の花は、秋の訪れを告げるように、咲きはじめます。庭に育つ一株のコスモスが風に揺れながら花を咲かせる姿は、もの悲しく、秋の気配を感じさせてくれます。

何万本、何十万本のコスモスが植えられた高原に、ピンク、赤、白、黄、橙(だいだい)など色とりどりの花が咲きはじめると、本格的な秋の訪れを告げているようです。「なぜ、秋に花を咲かせるのか」という疑問が浮かびます。

コスモスは、もの悲しく秋の気配を感じさせる

秋は、コスモスにとって、花を咲かせるのにちょうどよい気温だからでしょうか。あるいは、暑い夏が終わったからでしょうか。あるいは、寒い冬が近づいてきているからでしょうか。この3つの中に、正解があるのですが、どれだと思われますか。

花が咲けば、タネができます。そのため、この疑問は、「なぜ、秋にタネをつくるのか」という疑問に置き換えられます。

タネの役割の一つは、植物の普通の姿では耐えられない、寒さや暑さなどの不都合な環境を耐え忍ぶことです。コスモスにとって、不都合な環境とは何でしょうか。コスモスは冬に枯れる、寒さに弱い植物です。だから、毎年訪れてくる不都合な環境とは、冬の寒さなのです。

そのため、コスモスは、冬の寒い期間をタネで過ごすために、秋に花を咲かせ、タネをつくります。コスモスが秋に花を咲かせる理由は、寒い冬が近づいてきているからなのです。

もしそうなら、すごく大きな疑問が浮かびます。「コスモスは、秋の間に、もうすぐ寒い冬がくることを知っているのか」というものです。

それに対する答えは、「はい、知っています」というのが答えです。それを知れば、次には、「どうして知るのか」という疑問が浮かびます。その答えは、「葉っぱが、夜の長さをはかるから」です。その答えを知れば、次の疑問は、「夜の長さをはかったら、寒さの訪れが秋の間に前もってわかるのか」です。

それに対しては、「はい、わかります」が答えです。たとえば、夏を過ぎると、夜がどんどん長くなり、もっとも冬らしく長い夜は冬至の日で、12月下旬です。一方、もっとも寒いのは2月です。

「舌状花」と「筒状花」が集まって「頭状花」を咲かせる

コスモスは夜の長さをはかって、冬の寒さの訪れを約2カ月、前もって知っているのです。これは、コスモスに限られた性質ではなく、秋に花を咲かせる草花に共通のものです。

コスモスは、「秋に咲くサクラのような花」という意味で、「秋桜」と書かれます。しかし、サクラの花ほど、コスモスの花はよく知られていません。たとえば、「サクラの花を描いてください」と言えば、上手か下手かは別にして、多くの人はサクラの花を描きます。

5枚の花びらを輪状に描き、サクラの花びららしく見せるために、それぞれの花びらの先端に、少し切れ込みを入れハート形のようにします。そうすれば、サクラの花の輪郭はできあがります。花の中央にメシベらしきものを描き、何本かのオシベらしきものを描き込めば、サクラの花らしくなります。実際には、サクラの花にはオシベの数は数十本あるので、オシベを多く描けば、ますますサクラの花らしくなります。

ところが、「コスモスの花を描いてください」と言えば、多くの人は躊躇(ちゅうちょ)します。なぜなら、まず、花びらの枚数が知られていません。

多くの場合、コスモスの花びらは8枚です。そこで、長い楕円形の花びらを花のように輪状に8枚並べます。ところが、これだけでは、コスモスの花らしい輪郭は浮かんできません。

コスモスの花びらの先端には、4つの細かい切れ込みがあるのです。4つでない場合もありますが、5枚の花びらがくっついて1枚になった名残(なごり)ですから、4つが基本です。花びらに4つの切れ込みを入れると、コスモスの花のように見えます。でも、まだ、何かが足りません。

コスモスの花の中央には、小さな筒のような花が集まっています。ヒマワリの項で紹介した「筒状花(とうじょうか)」です。ですから、コスモスの花の絵を完成させるには、中央に小さな丸を多く描き込めばよいのです。

コスモスで、花びらのように見えるのは、ヒマワリと同じ、「舌状花(ぜつじょうか)」とよばれるものです。コスモスは、多くの舌状花と筒状花とが集まって1つに見える花〈「頭状花(とうじょうか)」とよばれる〉を咲かせているのです。

「コスモス」は「秩序」と「調和」をもつ世界を意味する

コスモスを含めてキク科の植物は、小さい花をたくさん集めて大きく見える、「頭花(とうか)」あるいは「頭状花」といわれる花を咲かせます。普通には、これが「花」とよばれます。キク科の「頭状花」には、3つのタイプがあります。

1つ目は、タンポポの花がその代表で、舌状花だけでできています。タンポポでは、開いた黄色の花びらのように見える1枚が、1つの花なのです。花びらに見える1枚をつまみ出すと、オシベもメシベがきちんとついています

2つ目は、ヒマワリやコスモスの花です。花のまわりには、舌のような花びらをもつ舌状花が並んでいます。花の中央には「筒状花」あるいは、「管状花(かんじょうか)」とよばれる花があります。

3つ目は、フキやアザミの花です。筒状花だけでできている頭状花です。これらの花には、花びらのように見えるものはありません。

「コスモス」という語は、「秩序」と「調和」をもつ世界を意味し、「宇宙」を指します。それゆえ、「この植物と宇宙との間に、どんな関係があるのか」と、多くの人々が興味を抱きます。ところが、この疑問に、誰もが納得するような答えはなさそうです。そのため、勝手に、2つのつながりに、思いをめぐらすことになります。

コスモスの花では、まわりに花びらに見える8枚の舌状花が規則正しく並び、中央には数十個の筒状花が集まっています。「その秩序の正しさと、花としての調和のとれた姿は、宇宙の秩序と調和に相通じるものである」と感じても、唐突なものではありません。

コスモスは宇宙の秩序と調和に通じる

これに加え、私の勝手な想像を聞いてもらえるなら、花の中央にある小さな筒状花の1つひとつに目を凝らして観察してください。これらは、筒状花、あるいは、管状花といわれるので、筒や管のように丸い姿であると思われがちです。

ところが、開く前の筒状花は、五角形の星型です。そして、開いた筒状花は、五角形の星が輝くような形に、花弁を広げています。目をすえてじっくり観察すれば、それぞれの花がきれいな星形に花弁を開いているのです。

これらの筒状花は、まわりの花がまず開き、日の経過とともに、徐々に中央のものが開きます。この星形の筒状花の開花を星の輝きに見立てれば、「花の中央には、星がいっぱいあり、次々と秩序正しく輝いていく」と感じられます。

特徴的な葉の形は、原産地メキシコの気候対策

コスモスという名前をつけた人は、ここに調和を感じ、花の中央に輝く星の姿を見たのではないでしょうか。それが「宇宙」につながったとしても、不思議ではないように思えます。

コスモスの葉っぱの形は、たいへん特徴的です。葉っぱは、1枚に深い切れ込みが多くあり、広い部分はありません。「コスモスの葉っぱは、なぜ、こんな形をしているのか」と、疑問に思われます。

これに対し、「ほかの植物の葉より風通しがよく、原産地メキシコで強い風に吹かれても倒れにくい形である」といわれます。

たしかに深い切れ込みが多ければ、強い風や雨は避けられるでしょう。強い風や雨への対策が、葉っぱにこらされているのです。

コスモス(秋桜)

[科名]キク科
[別名]アキザクラ( 秋桜)、オオハルシャギク(大ハルシャ菊)
[原産地]メキシコ
[花言葉]乙女の真心、調和(全般)、愛情(赤色)

ジャンルで探す