歯周病や骨粗しょう症…中高年女性に起こりがちな〈10の不調〉。年齢のせいと放っておかず、上手に対処を

50代~80代を悩ませる 不調別アドバイス〈前編〉 イラスト:毛利みき
更年期の頃から徐々に感じるからだの変化を知っておけば、あわてず対策することができるはず。とくに悩みの多い「10の不調」をピックアップ。さまざまな年代のからだの不調を診ている常喜眞理先生が、それぞれの改善ポイントを伝授します(構成=山田真理 イラスト=毛利みき)

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女性だからこその不調がある

私は内科医として都内でクリニックを開業する一方、産業医や人間ドック診療医と、さまざまな現場で仕事をしてきました。クリニックでは0歳から90代までの患者さんと接していますが、中高年以降の方とお話をしていて気づくのは、「とにかく長生きがしたい」という人よりも、「死ぬ日までできるだけ元気でいたい」と願う人が多いということです。

目指すは、ピンピンコロリの健康人生。しかし50代から80代にかけての女性のからだは、更年期から閉経、さらに老年期へ向かう変化のなかでさまざまな不調を抱えがち。とはいえ、不調を感じて受診したお医者さんに「年齢のせいですね」と言われてしまうと、年のせいなら諦めるしかないのか、このままどんどん悪くなるだけなのか、と気持ちまで落ち込んでしまいますよね。

年齢による変化は、誰にでも遅かれ早かれやってくるもの。しかしそうした変化をしっかりと受け止め、自分なりに上手に対処することで、変化のカーブをゆるやかにしたり、QOL(生活の質)を保つことは十分に可能です。まず健康診断を定期的に受け、自分の健康状態を把握しておきましょう。年をとってからの体質は親きょうだいと似るものなので、身近に高血圧や高コレステロール(脂質異常症)、骨粗しょう症、がんになった人がいれば、その点を意識してチェックすることもおすすめです。

中高年以降の女性に起こりがちな不調について、次のページから対応策をお伝えします。ぜひ参考にして、変化と上手に付き合うコツをつかみましょう。

中高年以降の女性に起こりがちな『10の不調』

目|歯|筋肉と骨|むくみ|尿トラブル|便通|睡眠高血圧うつ認知症

不調1【目】

目のレンズのピントが合わせづらくなる老眼は、まさに目の老化。光をまぶしく感じたり、夜間に見えづらい場合は白内障の可能性が。

スマホやPCなど近くを長時間見ることによる「大人の近視」が増えています。目の周辺の血行不良は「ドライアイ」の原因に。

《眼精疲労やドライアイにおすすめのケア》

いわゆる老眼をはじめ、目がしょぼしょぼする、疲れやすいといった不調が年齢とともに表れます。目の不調は見えづらさだけでなく、肩こりや頭痛、疲労感、イライラの原因になることも。「年のせいだから仕方がない」「視力は悪くなったら戻らない」と考える人も多いかもしれませんが、ピントを合わせる目の筋肉を休ませ、血流をよくして涙の質を改善することで症状を軽くすることは可能です。

見えづらさを感じたら、眼科できちんと視力検査を受けて、度の合った眼鏡を作りましょう。老化現象である白内障や、視野が欠けていく緑内障は、早期発見・早期治療のために定期的に眼科検診を。

日常生活では、疲れを感じたら目を休ませることが大切です。ドライアイの原因になるマイボーム腺(油分を分泌して涙の蒸発を防ぐ腺)の詰まりは蒸しタオルなどで目の周りを温めることでも改善されますが、眼科で扱う「まつげ用シャンプー(アイシャンプー)」で優しく洗って目の周りを清潔にするのもおすすめです。

不調2【歯】

加齢により唾液の分泌量が減ると、歯周病菌が繁殖しやすくなる。

歯周病が悪化するとかむ力が低下し、食生活に悪影響を及ぼすうえ、歯周病菌が血管に炎症を起こすことで心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病のリスクが高まります。

《全身に影響を及ぼす歯周病リスクを下げる》

年をとっても食事を美味しく食べるには、歯と歯ぐきの健康が欠かせません。虫歯に気をつけるのはもちろん、中高年がとくに意識してほしいのが歯周病予防です。歯周病菌は口の中だけにとどまらず、血管に入り込んで全身をめぐり、血管に炎症を起こすことで、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病といった生活習慣病の原因の一つになることが近年の研究でわかってきたからです。

毎日の歯磨きをきちんと行うのはもちろん、最低でも3ヵ月に一度は歯科で歯石を取り除くクリーニングを受けましょう。インプラントは骨にもかかわる手術ですし、生活習慣病で治療中の人は、さらに全身的な健康管理が必要になります。歯科医ですすめられた場合も、内科などのかかりつけ医に相談したほうがよいでしょう。

食べ物を飲み込む嚥下力も、50歳前後からだんだん衰えてきます。食事中にむせたり、食べ物が喉につかえる感じが気になったら、「嚥下トレーニング」を始めましょう。

不調3【筋肉と骨】

閉経後は女性ホルモンが減少する影響で骨量が低下し、骨粗しょう症のリスクが上がります。筋肉量は20代後半から徐々に減り、とくに下半身の筋肉量は60代後半から急激に減少。

筋肉と骨の衰えは将来の寝たきりにも直結するため、対策が必須です。

「スクワット」で下半身の筋肉を鍛えるのがおすすめ

《とくに高齢女性の骨は折れやすい》

最近どうも疲れやすい、ちょっとした段差でつまずくといったことが気になる場合、筋肉量や筋力が低下しているのかもしれません。とくに足腰の筋肉が衰えると外出や運動がおっくうになり、ますます筋力が衰えるという負のサイクルに陥りがち。さらに関節を支える筋力が弱くなることで、腰痛や膝痛など関節のトラブルも起きやすくなります。

筋力低下を防ぐには、下半身の筋肉をくまなく鍛える「スクワット」がおすすめです。食事はバランスよく3食しっかり食べ、筋肉のもとになるタンパク質を意識して摂りましょう。

スクワットのほかに片足立ちなどの運動は骨の老化予防にも役立ちます。食生活ではカルシウムやビタミンD、マグネシウムを食事からバランスよく摂りましょう。

女性は閉経すると骨量低下のスピードが速まるため、60歳を過ぎたら5年に1回は骨密度の測定をおすすめします。かかとや手で測る簡便型より、微量のエックス線を用いて腰の骨や脚のつけ根(股関節)で測る「デキサ法」のほうが正確に測定できます。また骨の老化には遺伝が深くかかわるため、親や近い親戚に骨粗しょう症の人がいる場合は意識して定期的に受けるといいでしょう。

不調4【むくみ】

女性ホルモンの減少で自律神経が乱れ血行が悪くなったり、筋肉量の減少でリンパの流れが滞ったりするため、むくみやすくなります。

中高年期の女性は腎機能の低下や心臓疾患、甲状腺疾患などによるむくみもあるので注意が必要。

気になるむくみがあったら要注意

《代謝低下、血行不良を改善する方法》

寝起きに顔がはれる、指輪が入らない(抜けない)、脚がだるくて寝づらいといった「むくみ」は、皮膚の下の組織に余分な水や老廃物がたまることで起こります。

運動や入浴で血行をよくする、お酒の飲み過ぎや就寝前の塩分の摂り過ぎに気を付ける、血行を妨げるきつい衣服や下着を避けるといった対処法で解消できる一過性のむくみであれば、それほど心配はいりません。

ただ、片足だけのむくみや長引くむくみは、血管の炎症や心臓・腎臓の病気、甲状腺の病気などがかくれている場合があります。気になる症状があれば、早めに医師の診断を受けましょう。

不調5【尿トラブル】

膀胱の筋力低下に加え、加齢により内臓が下垂し、膀胱を圧迫することで「頻尿」や「尿漏れ」が起こりやすくなります。女性ホルモンの減少で尿道まわりの粘膜が弱くなり、拭き方によってはかぶれや臭いトラブルの原因に。

《骨盤底筋を鍛えて頻尿や尿漏れを防止》

筋力の低下や内臓の下垂は、トイレが近くなる頻尿や尿漏れなどの原因にも。その場合、肛門と膣を締めたりゆるめたりする「骨盤底筋体操」で症状が改善するケースがあります。寝る前や朝に布団の中で行ったり、電車の吊り革につかまりながら続けてみてはいかがでしょう。

尿トラブルがメンタル面に影響し、膀胱には余裕があるのに尿意を感じてしまう場合もあります。夜に何回もトイレに起きたり、昼間も頻繁にトイレに駆け込んで生活に支障をきたすようなら、泌尿器科で膀胱の働きに問題がないか相談してみましょう。

尿道周辺がかゆかったり臭いが気になるのは、排尿後の拭き方に問題があるのかも。閉経後は粘膜が弱くなるため、トイレットペーパーでゴシゴシこすると炎症を起こしやすくなります。紙を折りたたみ、優しく押し当てて水分を「吸い取る」ように拭くのがおすすめです。また、洋式便座では大きく股を開き、やや前傾姿勢で排尿すると膀胱内の残尿を減らせます。

不調6【便通】

加齢による筋力低下、そして内臓を吊り下げている腹膜の下垂により大腸がだらんとゆるみ、大腸の曲がり角に消化物や空気(ガス)が溜まりやすくなります。

さらに、腸の働きが悪くなることで下痢や便秘を引き起こすことも。

《加齢とともにたるむ腸。排便のためのヒント》

中高年が下痢や便秘になりやすくなるのは、大腸の動きの低下が大きな要因です。大腸の筋肉や内臓を吊り下げている腹膜がたるむことで、だらんとした腸内に消化物や空気が溜まりやすくなることが、便秘やお腹の張りの原因です。また大腸の蠕動運動が鈍くなることで、便をこねてまとめる力が弱まり、下痢と便秘につながります。

便通の目的は老廃物を外へ出すことなので、「若い頃のようなバナナ形のいいうんち」にこだわらず、やわらかくても、1日何回に分けてでも、とにかく出すことが大事。便秘気味でも、最低2日に1度は排便することを目指しましょう。それには適度な運動や、食物繊維が豊富な食事、水分補給など腸の動きをよくする生活習慣が大切です。

あまりに便秘がひどい場合は、下剤を使ってでも排便すべきです。下剤は、酸化マグネシウムという塩類系のものがお腹も痛くなりにくく、習慣性もないため使いやすいと思います。便に水分を集めてゆるくしてくれます。

〈後編につづく

中高年以降の女性に起こりがちな『10の不調』

目|歯|筋肉と骨|むくみ|尿トラブル|便通|睡眠高血圧うつ認知症

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