まだ夢の特効薬ではないオプジーボ 使用条件クリアでも効くのは2割強

がん治療薬「オプジーボ」への期待は高まる(提供・共同通信社)

 少し前の話になりますが、10月に京都大学の本庶佑先生がノーベル医学・生理学賞を受賞しました。がんの治療には手術、放射線、抗がん剤、そして免疫療法があります。がん免疫療法は「免疫のがんへの攻撃力を高める治療」と「がんによってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる治療」に分けられます。本庶先生が開発したニボルマブ(商品名・オプジーボ)は後者です。
 私たちの体の中では、1日に5000個のがん細胞が生まれています。もちろん全て免疫機能で消去されるのですが、天文学的に低い確率でがん細胞が免疫機構をすり抜けて分裂を繰り返すと、人の生命を脅かすまで大きく成長します。
 体内にがん細胞があるとT細胞という免疫細胞が攻撃します。T細胞の表面にはPDー1という物質があり、これはT細胞に攻撃ストップを命じるブレーキの役目をします。免疫が暴走しないためのブレーキ機能です。
 一方がん細胞は、PDーL1というT細胞のPDー1と結合する物質を作って強引にT細胞のブレーキを踏ませ、がん細胞を攻撃できなくします。生き残るためとはいえ、がん細胞もズルいのです。ニボルマブはこのPDー1にくっついてPDーL1と結合できないように守り、T細胞は心おきなくがん細胞と戦えるのです。
 ニボルマブは免疫機能にブレーキをかける物質にピンポイントで作用し、T細胞の攻撃力を高めるのです。ただ、今のところニボルマブを使えるがん種は決まっていますし、使える条件も決まっています。それらの条件をクリアした方に投与した場合でも、残念ながら2割強の症例にしか効きません。正直まだ夢の特効薬というわけではありません。今後のさらなる研究が求められているのです。
 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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