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【子ども点描】「やる気」が出るのは高い目標より適度な難しさ

 今回は「やる気」をテーマにしたいと思います。保護者の方も先生方も、子どもたちにやる気を起こさせるにはどうしたらいいか、考えたことがあるのではないでしょうか。ひょっとすると、職場でもあるかもしれません。皆さんも自分のことと思って、少し考えてみてください。
 ちょっとした仮想実験をしましょう。もちろん実際に実験してもらっても構いません。まず不要になった新聞折り込み広告くらいの、裏の白い紙を用意してください。その真ん中に掌(てのひら)が入るくらいの円を描きます。それを周りに何もない壁に、テープなどで留めてください。
 次に、別の紙を丸めて投げやすい大きさのボールを作ります。課題は、その円にボールを命中させること。投げる距離は自由で、とにかく命中させるということです。
 さて、皆さんはどれくらいの距離から投げましたか。手を伸ばせば届くような距離、1メートルくらいから投げた人はいるでしょうか。大きな部屋を想像して、10メートルくらいから投げようとした人はいますでしょうか。たぶん、その間をいろいろと考えながら、一番当たる可能性の高そうな距離を探したのではないでしょうか。
 人間は面白い動物で、絶対にできるようなものにはあまり興味を示しません。かといって、100回試したら1回くらいしかできないような、超難解なものにも、なかなか挑戦しようとはしません。
 アトキンソンとリトウィンという研究者が、同じような実験をしたところ、やる気のある人ほど、簡単でもなく無理でもない距離を選ぶ傾向があることが分かりました。
 つまり「やる気がある」ということは、できそうもない難しいことに挑戦するということではなく、「適度な難しさを選んでやる力がある」ということなのです。
 良かれと思って子どもたちに高い目標を設定することは、実はやる気のある子どもにとっては、かえってやる気をそいでしまうことにもなりかねません。
 これは大人の場合も当てはまります。人間のやる気を考えるときに思い出していただけるとうれしいです。

 河合優年(かわい・まさとし) 大阪府岸和田市出身。武庫川女子大副学長、同大教育研究所教授・子ども発達科学研究センター長。中央教育審議会で専門委員を務めたほか、科学技術振興機構の「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」グループリーダーなどを歴任した。日本発達心理学会評議員、学校心理士スーパーバイザー。

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