【びっくりサイエンス】優しくて力持ち 油圧で精密に動く災害支援ロボット

東工大の鈴森康一教授らが開発した油圧モーターを用いたロボットハンド。4本の指で消波ブロックをつかんで持ち上げる=東京都目黒区の東工大(松田麻希撮影)

 被災地や工事現場など過酷な環境でも壊れにくく、精密に制御できる油圧式のロボット用駆動装置の開発に、東京工業大の鈴森康一教授らの研究グループが成功した。高出力で頑丈な油圧モーターの利点に、電動モーターのような細やかな制御と軽量性を併せ持つ、いいとこ取りの装置だという。実用化に向けて昨年10月に設立した東工大発のベンチャーを通じて受注を開始しており、来月にもサンプルの出荷を開始する。
タフでありながら繊細
 油圧式の機械は、ほこりの多い屋外で使うのに適しており、パワーがあるので重いものを運ぶこともできる。しかし従来、パワーショベルのような建設機械やプレス機といった据え置き型の産業機械向けに開発されてきたため、ロボットに使うには大きくて重過ぎる問題があった。
 一方、ロボットの多くに使われてきた電気モーターは繊細な動きを制御できるが、衝撃やほこり、雨などで壊れやすい。油圧に比べると力も弱い。
 厳しい環境で臨機応変に動く災害ロボットに使うには、従来の油圧式も電気モーターも帯に短し襷に長しだった。
 油圧式はシリンダーの中にある油をピストンで押したり引いたりすることで力を生み出す。研究グループは、油を閉じ込めるパッキンの摩擦を減らすなどして、ピストンが動く際の摩擦を従来品の約10分の1に減らした。スムーズな出し入れができるようになり、従来の油圧ロボットでは難しかった精密な動きや力加減が可能になった。
 さらに研究グループは、小型シリンダーの加工技術を有するJPN(東京都大田区)との共同開発で、シリンダを内径20~30ミリメートルまで小型化。また、素材にマグネシウム合金を使うなどして軽量化に成功した。
 小型軽量ながら、パワフルで精密に動くため、ロボットのアームやハンドの駆動装置として油圧モーターが応用できるようになった。
変身するロボットハンド
 過酷な環境で動かすロボットへの搭載を想定した試作も進んでいる。
 大阪大とコマツが中心となって開発した建設ロボットには、鈴森教授らが開発したシリンダーを6本用いた「タフハンド」を搭載。ハンドには、4つの指でがれきといったさまざまな形状や堅さの物をつまむ「ハンドモード」と、4本指をそろえて砂利などをすくう「シャベルモード」がある。
 まるで変身するように、2つのモードは一瞬でなめらかに切り替わる。対象物に応じて形や力加減を変えられるハンドは、多種多様な物が散らばる災害現場で威力を発揮しそうだ。
 がれきが折り重なる悪路も乗り越えるロボットを目指し、合計7個のモーターを使ったロボットの脚も開発。厚さ30ミリのコンクリートの板を3枚重ねたものを一瞬で割る強靱さを実現した。
 開発した油圧モーターには、すでに自動車関連など複数のメーカーが関心を寄せているという。鈴森教授は「(災害現場などに派遣する)レスキューロボットの開発に向け、継続的に技術提供するのが目標だ。またロボット以外にも民生分野への応用を進めるため、さまざまな企業と協力していきたい」と話した。
(科学部 松田麻希)

ジャンルで探す