【大人の遠足】今もファンが来訪 映画「釣りキチ三平」ロケ地(秋田・五城目町)

「三平の家」のロケ現場=7月、五城目町(藤沢志穂子撮影)

 昭和48年に少年漫画誌で連載が始まり、釣りブームを起こしたとされる「釣りキチ三平」。秋田県横手市出身の矢口高雄さん(79)が釣りの天才少年、三平三平(みひら・さんぺい)の挑戦を描いた作品だ。10年あまり続いた「昭和版」と平成13年から断続的に描かれた「平成版」の、単行本の累計発行部数は約3100万部。テレビアニメにもなり、イタリアなど海外でも人気が高い作品は、実写版の映画にもなっている。10年前の平成20年夏、秋田県五城目町で一部の撮影が行われた。
秋田各地でもロケ
 監督は「おくりびと」で米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎氏。ロケは矢口氏監修のもと、湯沢市など秋田県の各地で行われた。五城目町では秘境の清流のシーンで「ネコバリ岩」が、三平が祖父の一平と住む家に明治40(1907)年築の古民家が「三平の家」として採用された。
 「ネコバリ岩」は「根古波離岩」と当て字され、「踏ん張る」という意味の方言「ねこばる」から来ている。高さ約6メートルの巨岩の上に秋田杉やカエデ、ナラなどの巨木が波のように根を張り地面とつながる。地域では古くから知られ「観光資源になる」との外部の助言で、平成19年に地域の人々が名付けた。
 矢口さんが「原作のイメージにぴったり」と評価した三平役の須賀健太さんや、一平役の渡瀬恒彦さんらが、清流の水の中を進んでいくシーンの中で「ネコバリ岩」は登場する。撮影はヒルやアブに襲われる中で行われ、苦労続きだったという。
 「三平の家」はネコバリ岩から車で5分ほどの場所。管理する近野俊一さん(71)の妻の実家で、長く空き家で解体も検討していたところ、映画のスタッフから「撮影に使いたい」との申し出がある。かやぶき屋根で、和竿作りの名人の一平がいろり端に座り、天真爛漫(らんまん)な三平が、釣り道具を持って駆けだして来そうなたたずまいだ。
 「『山奥だから恥ずかしい』と妻は貸すことを最初、反対したんです。でも皆さんのお役に立てるなら」と近野さんは快諾。撮影中はスタッフを自宅に招いて食事を振る舞うなどねぎらった。映画は翌21年3月に公開。試写会では「涙がぼろぼろ出て感動した」と話す。同時に「三平の家」は一般公開された。ロケ当時の写真や出演者らのサインなどを展示。最初の年は約1万人が訪れた。今も作品のファンに加え、古民家の雰囲気を懐かしむお年寄りなどが訪れている。
今こそ求められる作品
 「釣りキチ三平」は天真爛漫な、両親のいない少年が釣りに挑み、対戦する相手の心を動かしていく物語でもある。映画のプロデューサーを務めた小池賢太郎さん(50)は「『自然の中でゆっくり生きる』素晴らしさを映画で伝えたくもあった。今の時代でこそ、求められる作品かもしれない」と振り返った。(藤沢志穂子)
 ネコバリ岩 秋田県五城目町馬場目の馬場目川上流部。JR八郎潟駅から車で約45分。11月下旬から4月下旬まで冬期通行止め。
 三平の家 秋田県五城目町馬場目北ノ又。11月下旬から冬期休館で4月下旬から再開。問い合わせは五城目町役場商工振興課(018・852・5222)。

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