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【大人の遠足】食品自販機のオートレストラン 人気のヒミツは…インベーダーゲームなど備えた昭和のゲームコーナー 埼玉・行田市の鉄剣タロー

オートレストランでは、天ぷらうどんを食べる男性の姿が見られた=埼玉県行田市下忍

 埼玉県行田市内の国道17号を車で走ると、「鉄剣タロー」と書かれた古い看板が目に入る。昨今にわかにブームとなっている食品自動販売機でうどんなどを提供するオートレストランだ。店内には「インベーダーゲーム」や「ストリートファイター」といったゲーム機が並び、昭和後期から平成初期のゲームセンターを想起させる。
 24時間365日
 同店で稼働している自販機は10台(飲料含む)で、主な商品は天ぷらうどん、チーズバーガー、ハムサンドの3つ。うどんは300円で、他2つは220円。うどんの自販機に300円を投入すると、「調理中」という文字とともに完成までの時間が表示される。出てきたきたうどんは温かく食べやすい温度で、だしの効いたスープの味が心地よい。
 ゲーム機はほとんどが20年以上前の機種で、最近のゲームセンターではめったに見かけないものばかりだ。時代背景なのかマージャンのゲームが多くなっているが、「ボンバーマン」などポピュラーなゲームもある。当時の雰囲気を漂わせており、遊べばもちろんのこと、遊ばずとも懐かしさを感じられる。
 店内で出会った武蔵村山市の製造業、西森諒さん(24)は「以前ツーリングしていたときに来たことがあって、気に入ったのでもう1度来てみた。うどんがおいしかった」と言いながら、店内の風景をカメラに収めていた。
 他にもカメラを持参する人が散見された。レトロな雰囲気は訪れた客を魅了するに留まらず、映画などのロケ地として使われることも多い。
 苦境乗り越え
 行田市といえば、埼玉古墳群から出土した鉄剣が有名だが、同店は同市を象徴する「鉄剣」と長男につける名前の「太郎(タロー)」から、同市で一番親しみやすい店を作ろうと名付けられた。開店した昭和63年ごろまで24時間365日食事が取れる食品自販機は国道沿いなどに点在し、人々に親しまれていたが、平成に入るとコンビニエンスストアが急増し、次々と姿を消していった。
 同店では食品自販機は不調だったが、ゲームコーナーの売り上げで埋め合わせていた。ところが、平成22年、県警の立ち入り検査があり、ゲーム機の一部が風営法に抵触するとして、50台以上が撤去され窮地に立たされた。
 一方そのころ、懐かしさからか食品自販機がメディアに取り上げられるようになり、希少価値も相まって人気が再燃。同店の売り上げも数十倍に跳ね上がった。今では常連客も、メディアを見て新規に訪れてくる客も増えた。
 文化残した「惰性」
 「自分ができることで報いることができるなら必ずやる」。同店の女性管理人(63)はそんな心構えで日々の仕事に取り組んでいる。
 冷凍庫が故障したアイスの自販機と同型のものを客が見つけてきたときには、群馬県まで出向いて交渉した。数カ月かけて買い取ることができたが、冷凍庫を取り出すことができず、かといってそのまま使用することもできない事態に。なんとか通電し、ルーレットが光る古い自販機を見て「勇気が出た」。「これを見た人にも何かを感じてもらえれば」とメーンのコーナーから少し離れた場所に置いてある。少しでも来店者に楽しんでもらうためだ。
 一時期の文化ともいえる国道沿いのオートレストランを守り続けてきた理由について管理人は「惰性かな」と笑う。同店は、多くの人に愛される同市の名所になりつつある。 (川上響)
 鉄剣タロー 埼玉県行田市下忍315の1。定休日なし。24時間営業。入場自由。JR高崎線吹上駅からバスで10分。東北道東松山IC、加須ICから約20キロ。国道17号熊谷バイパス沿い。