新型コロナ 10都府県に緊急事態宣言

ワクチン接種スタートも…集団免疫は数年単位か カギは情報発信

ワクチン接種の準備をする看護師ら=19日午後0時4分、大阪市中央区の大阪医療センター(鳥越瑞絵撮影)

 新型コロナウイルスワクチンの医療従事者への先行接種が進み、感染収束への切り札としての期待が高まっている。一方で、供給日程の遅れも足かせとなり、集団免疫の獲得には数年単位の時間がかかるとの見方が強い。国民の間で接種が広がるかは安全性に関する情報に大きく左右されるため、政府や自治体の情報発信も鍵を握っている。(伊藤真呂武)
 「メリットがデメリットを上回るのは明らかだ。予想以上に有効性が高い」。先行接種が始まった17日、日本医師会の中川俊男会長はこう述べ、ワクチンへの強い期待感を示した。
 その半面、供給日程は当初の想定から日に日に後退感が増している。65歳以上の高齢者は4月以降に一斉に接種を開始するはずだったが、米ファイザー製ワクチンの供給が追い付かず、4月中は地域や年齢が限定される見通しとなった。
 感染収束につながる集団免疫の獲得には理論上、人口の6~7割が抗体を持つ必要があるといわれ、供給日程のずれ込みが大きな支障になりかねない。
 もっとも、専門家の間では、集団免疫の実現には年単位の時間を要するとする考えが支配的だ。世界保健機関(WHO)も今年中の集団免疫獲得には否定的な見解を示している。
 「あくまで任意接種なので、不安感から躊躇(ちゅうちょ)する人も一定数いる。接種率は簡単には上がらない」と話すのは北里大の片山和彦教授(ウイルス感染制御学)。「重症者数の減少を実感するにも数カ月、集団免疫の水準に達するには3、4年かかる」と推測する。
 ファイザー製ワクチンは発症や重症化を予防する効果が確認されているが、感染そのものを防ぐかは分かっていない。未接種者の間で散発的な流行が続く可能性があり、別の専門家も「ワクチンの普及ですぐにコロナ前の生活に戻れるわけではない」とみる。
 また、日本ワクチン学会理事で長崎大の森内浩幸教授は「日本人は安全だけでなく、安心を求める気持ちが強い。海外の膨大なデータよりも周囲の一握りの人たちの評価を重視する傾向がある」と指摘。先行接種などで集める副反応などのデータをどのように情報提供するかで、接種率の振り幅が大きくなるという。
 例えば、報告例の多い接種部位の痛みや腫れは抗体を作る過程で通常生じる▽発熱や頭痛は数日以内に自然に治まる▽重篤なアナフィラキシー症状は治療法が確立され、命に関わる可能性は極めて低い-など「あらゆる症状の情報、データを明らかにすれば、不安感も落ち着いてくる」(森内氏)。
 先行接種は17~22日に約1万2千人に実施。副反応が疑われる症状の報告は、じんましんと悪寒の2件で重篤なものはない。今後、厚労省の審議会で因果関係などを科学的に評価する。医療従事者以外の延べ300万人分の接種後の健康状態も調べ、公表する。
 接種体制にも配慮が必要で、森内氏は「基礎疾患(持病)やアレルギーがあるなどして心配な人は、かかりつけ医で個別接種を受けるなどの選択肢があるほうがいい」と強調する。

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