【100歳時代プロジェクト】寿命縮める「座り過ぎ」 運動の“貯金”帳消し 立ち机上手に利用を

岡浩一朗教授の研究室では立ち机を取り入れ、スタッフは日常の作業を立って行う(同研究室提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて自宅などで過ごす時間が増える中、座って過ごす時間も長くなりがちだ。この「座り過ぎ」が高齢者らの生活習慣病のリスクを高め、ひいては寿命を縮めると指摘されている。運動習慣がある人でも、座っている時間が長くなれば運動の効果を帳消しにもしかねず、専門家は「ちょっとした動き」を日常生活で意識する重要性を訴えている。(山本雅人)
 死亡率4割増
 座り過ぎの危険性を指摘するのは、早稲田大スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授。岡氏によると、オーストラリアで約22万人を対象に3年間追跡した研究では、1日のうちに座って過ごす時間が長い人ほど、がんや心臓病、脳卒中による死亡率がアップし、11時間以上の人は4時間未満の人に比べて、死亡率が4割も高かった。
 また、日本人が1日のうち座って過ごす時間は平均7時間とも指摘し、「先進20カ国(G20)の中でも最長だ」と語る。その一因として、靴を脱いで和室などで過ごす文化の影響もあるとした。
 また、「データの解析から、1日8時間以上座っていると、さまざまな病気のリスクが高まる」という。
 そのメカニズムはこうだ。座って動かないままでいるとふくらはぎや太ももの大きな筋肉が使われなくなる。すると、血中の糖や中性脂肪が血管内にとどまったままとなり、高血糖や動脈硬化で死亡するリスクがアップする。最近では、座り過ぎが認知機能に悪影響を及ぼすことも分かってきている。
 さらに、ジム通いやジョギングなどの運動習慣があったとしても、座る時間が長いほど病気のリスクが高まるとの報告もあり、「運動習慣の有無と座り過ぎは別物だと考えて、“後で運動すればカバーできる”といった考えは持たないほうがよい」とも語る。
 「低強度」が減少
 では、ただ座る時間を短くして、定期的に立てばいいのか-というと、それだけではないという。
 食後の血糖値に関する研究で、長時間座った後に立った際、周囲を歩くなどの「ちょっとした動き」を行うと数値が改善されるものの、ただ立つだけでは改善しないとのデータがあり、「ちょっとした動きを取り入れることが大事だ」と岡氏は強調する。
 現代人の生活のうち、この「ちょっとした動き」に該当するのは、「ゆっくりとした歩行」や「コピー機へ移動してのコピー取り」「店舗での立ち仕事」といった低強度の身体活動で、1日のうち35~40%を占めるとされる。ただこのコロナ禍での外出減少などで「(通勤や自転車に乗るといった)中強度の活動や座っている時間を除いた、この(低強度の)部分が特に減っている」という。
 そこで岡氏が勧めるのが立ち机(スタンディングデスク)の利用。立つことで脚の筋肉を使うだけではなく、「座って過ごしていると立ち上がって動くのが面倒になるが、立っていたら次の動きが取りやすい」とし、「ちょっとした動き」を増やす効果が期待できる。
 オフィス用だけではなく、家庭で使えるサイズの立ち机も販売されており、立って使うことに特化した高さ固定のタイプ▽上下昇降することで座ったときにも使えるタイプ▽既にある机の上に載せて立ち机に変える小型のタイプ-などさまざまなものがある。
 使用の際には「疲労軽減用のマットを敷くか敷かないかでかなり違うのでセットで使うとよい」とアドバイスする。
 岡氏は「座り過ぎの有害性を意識し、立ち机のみならず、テレビのリモコンを離れた場所に置くなど“ちょっとした動き”が多くなるよう工夫してほしい」と話している。

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