【書評】『疫病2020』門田隆将著 圧巻、そして震撼の一冊

門田隆将著『疫病2020』(産経新聞出版)

 手だれの書き手である門田隆将さんは、本書では新著上梓という以上の、新たな「ジャンル」を打ち立てたといえよう。私はこの門田流・新ジャンルを「リアルタイム・ノンフィクション」と名付けてみたが、今後、まねのできる書き手はなかなか現れないにちがいない。
 ふつうノンフィクションといえば、一つの事件や事象について、ある程度の時を経て振り返り書かれるものだが、本書はそうではない。謎の疫病との未曽有の闘いの最中に、まさに走りながら書かれ、世に出された。それを、読者もまた同じ闘いの時空を走りながら読むのである。
 その震える「醍醐味(だいごみ)」は、他のどんな書籍でも味わったことがない。
 しかも、本書には「疫病」を巡るすべてが書かれている。
 ある章では安倍晋三政権の権力の裏事情を、ある章では手厳しい行政批判を、別の章では日本を代表する企業の弱点や国際政治の現実を、さらに、問題のウイルスの正体と、発生源の大国・中国の正体までを、ことごとく鋭くえぐり出している。
 本書の帯には「この怪物がすべてを暴いた」という、優れたコピーが躍っている。この「怪物」とはもちろんウイルスを指すが、しかし実はこの厄介なウイルスを媒介にして、著者・門田隆将が、今日私たちが抱えるありとあらゆる問題を暴き出したとも読める。克明なのに無駄がない門田さんの筆は、それだけに容赦がない。
 多くの証言者が登場する本書には、特別企画として、二人の人物と著者との対談も収録されている。対談相手の一人は作家の百田尚樹さん、もう一人は参議院議員の佐藤正久さんだ。立場こそ異なるものの、二人はともに安倍首相に敬意と信頼を寄せている。その二人が、まるで男泣きをするように、「国民を守れない国」日本を嘆き、信頼を寄せる首相に力いっぱい苦言を呈している。
 著者はいう。「政治は生き物である。政治家にとっては、危機の時は、逆にチャンスでもある」と。
 疫病との闘いはまだ終わってない。果たして私たちの国、社会は危機をチャンスにできるだろうか。一人一人がその道を探るためにも必読の書である。(産経新聞出版・1600円+税)
 評・有本香(ジャーナリスト)

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