【話の肖像画】セブン&アイHD名誉顧問・鈴木敏文(87)(15)「業革」で利益体質へ

イトーヨーカ堂の業務改革委員会では「単品管理」と「変化対応」を訴えた

 《イトーヨーカ堂は昭和56年8月中間決算で創業以来初の経常利益減益を喫したことを契機に、56年冬から“体質改善”に向けた準備をスタートさせた。57年2月にプロジェクトチームが発足、後に「業務改革委員会」と名称変更したことで「業革」と呼ばれる》
 業革でイトーヨーカ堂の業務を総点検してみたところ、大きくなった組織は複雑で、現場(店舗)までの情報伝達が遅くなっていることが見えてきた。例えば、本部などから各店舗に届く通達は1日200通以上にもなっていて、多すぎて現場では対応しきれない。結局、組織は漫然としたままだった。
 そこで全国約100店の店長を集めて会議を始めた。毎回100万円以上の費用がかかるが、本部と店舗のコミュニケーションの仕組みを変えたかった。店長会議は56年の年末から毎週行って、57年2月に組織改革と社員の3分の1以上に当たる約4500人の人事異動を行った。
 《組織改革と同時に発令したのが「死に筋捜しプロジェクト」だった》
 「売れ筋」商品を探すのではなく、「死に筋」を探すことが目的で、1つの商品の売れ行きと在庫を管理する単品管理を徹底した。イトーヨーカ堂にはPOS(販売時点情報管理)はまだ導入されていない。伝票と商品を手作業で照合して棚卸しする大変な作業だった。
 昔の商売は楽なもの。物のない時代だから、消費者は目の前にある中から選んで買わざるを得ない「売り手市場」だった。それが、物が大量にある時代になって、消費者はそこから選んで買うようになる。実権は売り手から買い手に移って「買い手市場」に変わった。
 長年やってきた経験は通用しない。それは市場が変化したからだ。状況分析して対応していかなければならないし、単品管理で情報を集めて分析するしかない。このころから僕は「単品管理」という言葉と、「変化対応」という言葉を使うようになった。変化をみて、それに対応しろ、ということなんだけどね。
 《売れ筋商品の品切れ率が高く、年間1200億円の販売機会損失があった。商品のアイテム数を絞り込む実験も行った。仮説と検証、データ主義の本領を発揮した》
 ワイシャツは単品管理で好調な4柄に絞り込んだ。メーカーは反対したが、店頭での販売実験で売り上げは落ちないと証明された。売り場は柄とサイズの違いで1千アイテムあったのが300アイテムに削減できた。
 《業革2年目、58年8月中間決算で経常利益も対前年同期比1・5倍とプラスに転じた》
 消費税導入もあったがずっと増益で、営業利益は平成5年2月期に839億円。ダイエーやジャスコといった競合5社を足してもイトーヨーカ堂1社の方が高いという状況になった。(聞き手 日野稚子)

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