「患者に何が必要か」 作業療法士、上東隆明さん

患者のリハビリをサポートする上東隆明さん=京都市下京区

 「患者一人一人に何が必要か。その人に合った作業療法を提供したい。そのためには1人暮らしなのか、奥さんがいるのか、あるいはどんな持病があるかなど個別の事情を知らないといけない」
 京都市下京区の京都回生病院で作業療法士として勤務する上東隆明さん(26)は、そんな心がけで患者と接している。
 作業療法士は、骨折などけがをして運動機能が衰えた患者のリハビリをサポートする。同じくリハビリを担う理学療法士が歩いたり起き上がったりする基本的な運動機能の回復を図るのに対し、入浴や食事、着替えなど、より日常生活に則した動きができるよう手助けし、時には精神面でのアドバイスも行う。
 1年ほど前、背骨の骨折で入院した80代男性のことが忘れられない。「もう治らない。無理だ」と自暴自棄になっていた。
 若い頃の苦労や楽しかった体験など身の上話をじっくりと聞いたうえで、「少しずつでもリハビリをやっていこう」と励ますと、男性は気持ちが前向きになり、リハビリに熱心に取り組んだ結果、4カ月ほどで退院した。リハビリの必要がなくなったいまも週に1回程度来院、上東さんのもとを訪ねているという。
 「患者とコミュニケーションをとることが一番大事。気持ちを盛り上げ、リハビリに対してやる気になってもらうわけです」
 担当しているのは入院患者約20人。骨折や難病で運動機能が衰えた患者たちで、半分ほどが70~90代の高齢者だ。
 高齢になると、骨密度が低下し、骨折しやすくなる。腕や脚を骨折してギプスを装着すると、2、3日で関節が硬くなり始め、完治するころには動かせなくなることが多い。
 ギプスが負傷部分の周囲から段階的に外されると、外された部分を少しずつ動かしてもらう。さらにギプスが完全にとれると、もんだり触ったりする徒手療法を施す一方で、鉛筆を持ったり、折り紙をしたり、顔を洗ったりと、さまざまな日常の動作を繰り返してもらう。指を細かく動かすため、かご編みも取り入れている。
 高齢者は高血圧や糖尿病、心臓疾患などの持病を抱えているケースが多い。このため、骨折で入院しても、けがを治すことだけでなく、こうした疾患にも対応した「総合的なアプローチ」が必要という。医師や作業療法士、理学療法士、看護師、介護福祉士らが協力し、日常生活に戻れるようケアしていく。
 和歌山県かつらぎ町出身。県立高校に通っていた当時から、医療関係の仕事に関心があった。理学療法士になるか作業療法士になるか悩んだが、作業療法士のほうが幅広い分野の仕事ができると思い、進路を選択。大阪医療福祉専門学校(大阪市淀川区)作業療法士学科で学び、平成28年に京都回生病院に就職した。
 作業療法士として働いて4年目。将来の目標を尋ねると、「実は教育に興味がある。専門学校などで、自分が培った技術を伝え、後進を育成したいと思っている」と目を輝かせた。(張英壽)
 【作業療法士になるには】専門学校や大学で、人体の構造や、リハビリテーション医学、心理学など多岐にわたる分野を学び、国家試験に合格する必要がある。就職先は病院や介護施設、福祉施設など幅広い。

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