【話の肖像画】マンガ家・永井豪(74)(9)石油ショックでページ半減

漫画家の永井豪さん=魚眼レンズ使用(酒巻俊介撮影)

 《「デビルマン」「マジンガーZ」とアニメ番組とのメディアミックス作品をヒットさせ、昭和48(1973)年に週刊少年チャンピオンに発表したのが「キューティーハニー」だ。美少女アンドロイド、如月(きさらぎ)ハニーの活躍を描く変身アクションでアニメとともに、映画化もされた》
 アニメ制作会社のプロデューサーから「得意なものをどうですか? エッチなあれを」と言われてまして…。「テレビだから制限あるんでしょ?」と答えたら、「変身ものなんかどう?」との提案でした。映画やドラマになった探偵もの「多羅尾伴内」シリーズの七変化がイメージにあったのかもしれません。女の子が主人公なら、ふつうに変身するのではつまらない。一瞬、裸が見え、あとから衣装がついてくる変身ならテレビアニメでも大丈夫かな、と思いました。主人公に色っぽい要素があれば、戦うたびにオッと目を見張ってくれるはず。敵のパンサークローも女性だらけにしました。男性向けに作ったつもりが女性ファンが多くついてくれたんです。一瞬でファッションを変えられるところがよかったのかな。
 《「ハニー」の前に週刊少年チャンピオンで連載していたのが「あばしり一家」。ハニーや、悪馬尻(あばしり)家の長女・菊の助が名前を変えて登場するのが、同年に始まった「バイオレンスジャック」。複数の永井作品のキャラクターや設定がパラレルワールドのように登場する「スターシステム」を大いに活用した》
 スターシステムは手塚治虫先生が早くから用いていた。それぞれのマンガのキャラクターを別の側面で描けないか、と常に考える。視点を変えて登場すれば、まったく違ったストーリーができあがるのではないか。「バイオレンスジャック」では各キャラクターが背負っている世界まで引っ張ってきて描きました。前の作品と、つながりを持たせられたらいいなと。
 《「バイオレンスジャック」は関東地方に大地震が起こり、周囲から隔絶された無法地帯にさまざまな強者が現れて戦国時代になっていく一大SF叙事詩。永井作品に登場したキャラクターが勢ぞろいし、インターバルを挟んで、雑誌を変えながら連載された》
 遠大な計画を立てていたが、石油ショックで紙の価格が暴騰、雑誌は薄くなり、1話でボクが使えるページ数も12枚程度に半減してしまった。スケールの大きい話なのに1話では起承転結を描けず、読者はわけがわからなかったことでしょう。週刊少年マガジン、月刊少年マガジンと移って、5年間ほどあいて週刊漫画ゴラクに7年間描き、平成2年に完結しました。
 《その後、9~10年にかけて発表した「豪談」シリーズは、講談集「立川文庫」にある物語をベースに新解釈を加え、猿飛佐助や雷電為右衛門らを仲間とともにコミカライズ(漫画化)した》
 英雄をとりあげた「立川文庫」は子供のころによく読んでいた。落語だけでなく浪花節や講談はラジオでもよく聞き、父親が語り聞かせてくれたから、なじみはあったんです。長兄が戦前から「キネマ旬報」をずっと定期購読しており、映画は見なくともシナリオを読んで中身を想像したりしていた。そんな経験も役立ったのかな。
 《昭和44年に設立したダイナミックプロダクションでは、現在は弟の隆さんが社長を務め、次兄、三兄も携わっている》
 出版社やアニメ制作会社、おもちゃ会社などとの折衝をやってもらえたのは助かった。(経営が)いいときも悪いときもあったけど、マンガを描くことだけ考えればいいようにしてくれたのは、兄弟のおかげですよ。(聞き手 伊藤洋一)

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