東日本大震災で被災し奈良移住 彫刻家夫妻、恩返しの展覧会

二人展の開催を喜ぶ安藤栄作さん(左)と妻の長谷川浩子さん=奈良県天理市

 東日本大震災で被災し、現在は移住先の奈良県天理市に拠点を置く彫刻家、安藤栄作さん(57)と妻の長谷川浩子さん(57)による合同作品展「二人展」が11日、同市川原城町の「Art-Space TARN」で始まった。津波で全てを失い、失意に暮れながら新天地で再出発した安藤さんは「身一つから立ち上がってここまでこられたのは、奈良の人たちの支援のおかげ。その恩返しになれば」と話している。25日まで。
 平成23年3月11日、夫妻は当時住んでいた福島県いわき市で被災。家族は全員無事だったが、海沿いにあった自宅兼アトリエと作業道具、丹精込めて手がけた数百点の作品が津波にのみ込まれた。
 福島で新たな活動拠点を探したが、なかなか場所が見つからない。そんな中、夫妻の頭に浮かんだのが奈良だった。安藤さんは若い頃に訪れた明日香村の伝承に興味があり、長谷川さんはもともと仏像好き。当時高校生だった長女も神社仏閣がある古い街並みにひかれたといい、「いっそのこと、みんなが好きなところに行こう」と移住を決断。2カ月後に明日香村に移り、翌年からは天理市を拠点に創作活動を続けている。
 安藤さんは手斧で丸太をたたき、粗い表面に仕上げるエネルギッシュな作風が特徴。一方、長谷川さんは布やペーパーで丁寧に木材を磨きあげ、貝殻を原料とする伝統の顔料「胡粉(ごふん)」を使った白塗りの作品で知られる。一見すると対照的だが、安藤さんは「どちらも形を探し続けた痕跡を残している。アプローチは違うが、そういった意味で2人の作品は共通していると思う」と語る。二人展では、安藤さんの作品を13点、長谷川さんの作品を8点展示している。
 作品に用いている木材は吉野ヒノキや九州産クスノキ材など。桜井市の材木店からは「こんな木がほしいという希望があれば言ってください。市場で見つけてきますから」と惜しみない協力を得ており、安藤さんは「作品を通じて彫刻の楽しさや喜び、生命感と向き合ってほしい。僕らがいい作品を作ることが恩返しになる」。長谷川さんも「自由に見てもらい、何かを共有できればうれしい」と話している。
 開館時館は午前11時~午後5時。15、21日は休廊。土日は夫妻のいずれかが在廊する予定。問い合わせは天理市文化振興課(0743・63・1001)。

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