石破首相が初外遊、中国と「戦略的互恵関係」を確認…韓国とはシャトル外交継続で一致

 【ビエンチャン=上村健太、吉永亜希子】石破首相は10日、ラオスの首都ビエンチャンで日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議などに出席し、首脳外交を始動させた。中国の 李強リーチャン 首相や韓国の 尹錫悦ユンソンニョル 大統領らとの個別の首脳会談にも臨み、日中間では、共通の利益を拡大しながら協力する「戦略的互恵関係」の推進を確認した。

首脳会談前に握手する石破首相(左)と中国の李強首相(10日、ラオス・ビエンチャンで)=川口正峰撮影

 石破首相は就任後、初の外遊で各国首脳との信頼関係の構築に力点を置いた。10日昼(日本時間同日午後)の日ASEAN首脳会議では、「半世紀にわたる信頼関係を構築してきた。さらに強固なものにする強い決意を伝える」と語った。海洋安全保障などでの協力促進に触れ、歓迎された。

 地域情勢にも言及し、沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入などを繰り返す中国を念頭に、「東シナ海で日本の主権を侵害する活動や挑発的な軍事活動が継続・強化されていることに強く反対する」と強調。南シナ海での威圧的な活動への深刻な懸念も表明した。

 首相は10日夕(同10日夜)の日中首脳会談で「両国は戦略的互恵関係を包括的に推進し、安定的な関係を構築するという大きな方向性を共有している」と述べた上で、両国間の懸案を議題とした。

 中国広東省深圳市で日本人学校の男子児童が刺殺された事件に関する真相解明や再発防止を求めた。東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、日中両政府が合意した日本産水産物の輸入再開の早期実現も要請。中国軍機による領空侵犯など、中国軍の活動の活発化に関しては、深刻な懸念を伝えた。

 中国国営新華社通信によると、李氏は「建設的で安定した関係の構築に努めることが望まれる」としつつ、「(両国の)発展はお互いにとって重要な機会で、挑戦ではない」と指摘した。日本の国家安保戦略で、中国の軍事動向などを「最大の戦略的な挑戦」としたことを意識したとみられる。

 これに先立つ日韓首脳会談は、相互に往来する「シャトル外交」の継続で一致するなど友好ムードに包まれた。尹氏は「関係発展を共に図っていきたい」と呼びかけ、首相は「尹氏と岸田前首相が大幅に改善させた日韓関係を引き継ぎ、発展させたい」と応じた。

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