103万円の壁見直し“5兆円減収”の地方は…「減収分は国が穴埋めすべき」 全国知事会が総理に“進言”【news23】

103万円の壁の引き上げや基礎年金の底上げについて、25日に議論が行われました。財源はどうするのか、意見が飛び交いました。

「103万の壁」見直しで地方財源に穴 全国知事会が総理に“進言”

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25日夜、官邸に集まったのは40都府県の知事や副知事たち。石破総理ら閣僚との会議が行われました。

宮城県知事で全国知事会の村井会長が切り出したのが「103万円の壁」についてです。

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全国知事会 会長 宮城県 村井嘉浩知事
「所得があがる、労働力不足の解消につながる施策でありますので、誰もが反対できない。知事会としても賛成しているが、地方の財源に大きな穴があいてしまっては意味がない。『総理に直接言ってくれ』と知事から言われたので、この場で申し上げたい」

衆院選で国民民主党が掲げ、与党と引き上げることで合意した「103万円の壁」の見直し。国民民主党の主張通り、178万円に引き上げると地方の税収が5兆円以上減るとされています。

「減収分は国が穴埋めすべき」との知事らの訴え。「地方を守る」と強調してきた石破総理はどう答えたのでしょうか。

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全国知事会会長 宮城県 村井嘉浩知事
「(Q.石破総理と103万円の壁の話したか)なかったですね。一人一人、雑談で終わってましたよ、どの知事に対しても。政策的な話は一切しなかった。(Q.会長自身は)しませんでした」

自民党・税制調査会総会での焦点も「103万円の壁」です。

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自民党  西田昌司 参院議員
「(Q.地方自治体から地方住民税が減収になる懸念)ありますよね。国税がしっかりその分は交付税措置をしてね、国債発行でしっかり渡せばいい話で」

財源が課題 ほかにも… 「基礎年金」引き上げは数兆円規模の国庫負担に

財源が課題となっているのは、「103万円の壁」だけではありません。

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25日に行われた、厚労省の年金部会では委員から、「将来世代の税負担の増加に繋がる」「財源の確保の時期が曖昧だ」といった意見が飛びました。

年金部会で示されたのは、すべての人が受け取る「基礎年金」の給付を底上げする案。

会社員が受け取る「厚生年金」の積立金の一部を基礎年金の給付に充てるといいます。実現すれば将来的には基礎年金の給付水準が約3割引き上げられる見通しです。

ただ、「基礎年金」の引き上げによって、将来的には数兆円規模の国庫負担が生じることになり、ここでも財源をどうするのかが課題となっています。

国民案・立憲案で“政治的判断”を迫られる石破総理

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藤森祥平キャスター:
国民民主党の玉木代表が言う「103万円の壁」の見直し案は実現するのでしょうか。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
地方は財源が足りなくなるということで悲鳴を上げていますし、玉木代表は178万円まで引き上げる根拠に、最低賃金が1.7倍くらいになっているからと言いますが、国や自民党からすれば、物価のレベルでいうと(最低賃金は)10%ぐらいしか上がっていないということになるでしょう。

なので、「せいぜい130万円ぐらいじゃないか」という議論があり、玉木代表の178万円という金額の満額回答は難しそうです。

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それからもう一つ、130万円の「社会保険の壁」もあって、130万円を超えると社会保険の支払いが生じて、ガクッと手取りが減ってしまいます。

それに対して、立憲民主党が給付金という形で200万円くらいまで税金で穴埋めする案を出していますが、実は政府の中でも「なかなか良いのではないか」という議論になっていて、こちらも検討の対象になっています。

これは税金と違い社会保険の方なので、厚生労働省の分野です。

藤森キャスター:
立憲民主党の案、今まであまり表に出てきていなかったような気がしますが…

星さん:
実は、政府の専門家の中にもこの案を支持する動きはあります。

小川彩佳キャスター:
現状、国民民主党と合意して、“103万円の壁”の見直しを受け入れる形で自民党で議論が行われていますが、立憲民主党の“130万円の壁”の見直し案も取り入れる可能性があるということですか。

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星さん:
国民民主党の「“103万円の壁”の見直し」は、控除を増やしてやるわけですが、それでは地方からは不安の声があがり、財源の問題もあります。

立憲民主党の「“130万円の壁”対策」は数千億円で、それほど財源の問題は大きくなく、地方には直接の影響はありません。

政策的な面と、2024年の通常国会や参議院選挙を睨んで、野党第一党の立憲民主党の案を重んじるべきか、28人で鍵を握っている国民民主党を重んじるかという政治的な判断を石破総理は迫られているという状況です。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
「財源はどうするのか」という議論に必ずなりますが、私は結構、税金を払うのが好きです。

ドイツで過ごした経験が大きいと思いますが、大学や医療費がタダで、税金にすごく支えられたという気持ちがあります。払えば払った分だけ社会に役立ってるという感じもあって、いいことはあると思います。 

でも、今の日本は社会のことよりも、まず自分の手取りを増やしたいという人が多いようです。それだけ生活が厳しいのだと思いますし、「税金を払っても無駄になる」という考えが蔓延してしまっているのでしょう。

どうしても税金は必要になるのに、税金を社会のために使い、負担をどう考えるのかということを議論すること自体が難しくなってしまっているのは、根深い問題だと感じます。

星さん:
「103万円の壁」の見直しに必要な7兆円、8兆円の財源があるのであれば、むしろ大学の授業料を安くするとか、奨学金を充実させるなど、学生がアルバイトをしなくても済むような環境作りについて議論してもらいたいと思います。

小川キャスター:
「税金を払いたくない」「(税金は)少ない方がいい」という大前提をリセットして議論する必要があるのかもしれません。

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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済思想 社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破

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