片山元総務大臣が裏側語る…総務省から“根回し”あった? 年収の壁上げると5兆円減収、地方から悲鳴「財政破綻」【Nスタ解説】

きょうも話し合いが続く、いわゆる「103万円の壁」の見直しですが、自治体からは懸念の声もあがっています。
地方の税収が5兆円減るともいわれ、ごみの収集にも影響が出るかもしれません。

5兆円の減収…一般家庭でたとえると収入が30%下がるイメージ?

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良原安美キャスター:
国民民主党は、所得税が発生する“壁”を103万円から178万円に引き上げ、手取りを上げるのが狙いだと主張しています。しかし地方からは、これにより税収が減ってしまうと懸念の声が広がっています。

19日、全国知事会から自民公明の税調関係者に対し、「地方の財源」について考えて議論するよう要請が出されました。

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では、税収はどのくらい減ってしまう可能性があるのでしょうか。仮に、国民民主党が主張する178万円まで壁が引き上がったとします。すると、地方に入るはずの住民税や、所得税の一部が減ります。ある試算では、地方全体の税収が年間で5兆円強減少するといわれているのです。

各自治体の税収は実際にどのくらい減ってしまう可能性があるのか、知事の発言をみていくと…

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●神奈川県 黒岩祐治知事:最大約1000億円減少
●群馬県 山本一太知事:約830億円減少
●宮城県 村井嘉浩知事:約810億円減少
●愛知県 大村秀章知事:約960億円減少

このように、かなりの額が減ってしまう可能性があるわけですが、わかりづらいので一般家庭でたとえてみます。地方税が専門である関西大学の石田和之教授いわく「計算上、収入が30%下がるイメージ」とのことです。

たとえば年収500万円の家庭があったとすると、30%下がれば年収350万円になり、生活を見直していかなければなりません。それぐらい下がるということです。

井上貴博キャスター:
これだけ税収が減るのは厳しいと思いますが、かたや「手取りが増えて経済が回ってこのくらいプラスになります。ですから、実現可能性がこのくらいの見通しです」ということをあわせて提示するのも国会議員の仕事だと思います。

しかし国民民主党も、それを「出す、出す」と話しているのに、まだこの段階で出てきていません。そこも含めて、議論の俎上に乗せていただけないかという気がするのですが…

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前鳥取県知事 片山善博氏:
その通りです。手取りを増やすと国民の所得が増えるので、所得税も住民税も多少増えます。

ただ、税収が減ったものと税収が増えるものとがどういう関係になるのかというのは、ちゃんと計算しなければいけません。しかし、それができていないのです。

なんとなくふわっと「手取りが増えれば税収が増える」という話はありますが、目分量で言うと、減収ほどは絶対増えません。ですから、穴が大幅に開くことは確かだと思います。

いろいろな前提を置かなければいけませんが、かなり大雑把な計算はできますし、減収に見合う増収はまかなえないということは、おおよそわかるでしょう。

ホラン千秋キャスター:
それは、出そうと思えば出せる情報ですよね。「結局マイナスになるじゃないか」と指摘されることを懸念して出していない可能性もあるのでしょうか。

前鳥取県知事 片山善博氏:
その可能性もありますし、あまり考えていなかったという可能性もあります。

というのは、選挙のときに「手取りが増えます」と言うと、やはり有権者の皆さんは喜びますよね。「実はこのようになります」というのは、あまり考えていなかったのかもしれません。

教育、福祉、人員削減…年収の壁の引き上げで生活への影響は?

井上キャスター:
手取りを増やす、103万円の壁を上げるというワンイシューは、確かにわかりやすかったです。しかし議論を進めるうえで、178万円まで上げるのは厳しいから130万円までなのか、それとも150万円までなのか、その落としどころもオープンに話を伺いたいと思います。

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元競泳日本代表 松田丈志さん:
試算をしていただいて、どのラインが本当に実現可能なのかというところは知りたいです。手取りが増えたくないと思っている人はいないですし、手取りが増えるのは嬉しいことですが、実現可能かどうかの根拠は示してほしいです。

良原キャスター:
地方の減収があった場合、どのような影響が考えられるのかを片山さんに伺いました。

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●教育:正規の教員が非正規になる、子育て支援の削減
●福祉:福祉バスや敬老バスの廃止
●人員削減:市役所などでの待ち時間の増加、出張所の閉鎖

総務省から“根回し”あった? 元総務大臣が裏側語る

良原キャスター:
一方、この問題について物議を醸していることがあります。年収の壁の引き上げをめぐり懸念の声が広がるなか、「総務省の“根回し”があった」と、国民民主党の玉木雄一郎代表が主張しているということです。

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流れをみていくと、11月13日、玉木代表は民放番組にて「『税収が減るから』と総務省が全国知事会等に根回しをしている」と発言しました。

これに対し14日、全国知事会の会長でもある宮城県の村井知事は「総務省か総務大臣から私にアプローチがあったという事はない」と否定しています。

また、“根回し”があったと指摘された村上誠一郎総務大臣も15日、「依頼していない。玉木代表の発言は残念ながら理解できない」としました。

そして、“根回し”はないという反論を受けた国民民主党の榛葉賀津也幹事長は同じく15日、「大臣から全国知事会に連絡を入れていると複数筋から確認できた」と発言。このように、情報が錯綜している状態です。

井上キャスター:
これまでの自公政権で強かったときは、こういった話が表に出ず、自公だけで話が進んでいった面があります。しかし、こういった野党との協議もしなければならなくなり、さまざまなことがオープンに出てきたという意味では、前向きに捉えてもいいように思いました。

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前鳥取県知事 片山善博氏:
議論が活発になりますし、議論の前提となるいろいろなデータも出てこざるを得ないですよね。表で議論をすることが、今までよりは増えるのではないでしょうか。

“根回し”については、私もかつての経験で、何らかの働きかけはあったと思います。ただ今回の場合、「税収が減ります」というのは、“根回し”ではなく注意喚起なんですよね。

「自治体の皆さん、ぼやぼやしていると思わぬところで大幅に減少になりますよ」というような注意喚起は、当然したと思います。

ホランキャスター:
ふるさと納税などで潤沢に資金がある自治体は、それを充てることもできると思いますが、どのような自治体が税収減によって困りやすい傾向にあるのでしょうか。

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前鳥取県知事 片山善博氏:
一般的には大都市です。たとえば神奈川県なら横浜、川崎、相模原といった政令指定都市へのダメージが大きいでしょう。政令指定都市は住民税の割合が高いので、横浜や、特に川崎は大変だと思います。

もう代替財源もないので、どこを減らしますかというと、私が恐れるのは、たとえば学校の正規の教員を非正規に置き換えてしまうことです。これは今でも財政難のところはやっていますが、そういうことがこれから進行するのではないかと、私はすごく懸念しています。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
県の税収がどれぐらい減るかという試算がありましたが、県の人口の規模感などとは、あまり比例していないように見えました。

前鳥取県知事 片山善博氏:
いえ、かなり比例はしていると思います。個人住民税なので、だいたい人口に比例しますし、あとは高額所得者が多い地域とそうでない地域とで差があります。

鳥取ぐらいの小さな県でも、150億円ぐらいの減収になります。鳥取県は税収入が600億円ないため、それで150億円減るというのはものすごいダメージです。

井上キャスター:
政府は、自分たちが進めたい政策については兆円規模でどーんと予算をつける一方で、こういう7兆円の減収ということになると、ブレーキを踏みたがるように見えてしまいます。納得できないモヤモヤ感があるのですが…

前鳥取県知事 片山善博氏:
今までの岸田内閣のときも何兆円と予算をつけることはありましたが、だいたい単年度で終わります。

しかし今回、103万の壁を国民民主党の言うとおりに変えると、恒久的に未来永劫続きます。これは政府としても、やはり二の足を踏まざるを得ません。

ホランキャスター:
確かに、頻繁に見直すものではないですものね。

井上キャスター:
今週中にも何か結論が出る、というところにはなってきました。

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<プロフィール>
片山善博氏
前鳥取県知事
大正大学 地域構想研究所所長
2010年9月から翌年まで総務大臣を務める

松田丈志さん
元競泳日本代表
五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父

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