「私たち捨てられた…」103万円の壁以外の大問題を立憲・野田代表に問うた【報道1930】
自民党を過半数割れに追い込んだものの野党の結集はなく政権交代には至らなかった。とは言え野党第一党として予算委員長をはじめ国会運営上重要なポストをいくつも手に入れた立憲民主党。国会の様相は一変することになる。
野田代表は「新しい委員会運営、実質的な国会審議で面白い国会になると思う」と語る。国政に一定の影響力を持った野田代表に“政治とカネ”や“103万円の壁”ではない深刻な問題をぶつけた。
「お前ら喧嘩しとらんと何で手を組まんのか」
死者422人、行方不明者3人、住宅被害9万棟以上の被害となった能登半島地震。元日の発生から10か月以上が過ぎた現在の復旧状況は驚くほど進んでいない。例えば公費解体率は約24%、宿泊施設の営業稼働率は約14%(石川県・10月末現在)。
阪神淡路大震災、東日本大震災に比べても復旧・復興はかなり遅れている。何故なのか?
石川県・輪島市。大地震に加え、9月には豪雨に見舞われた。自宅が床上浸水したという75歳の女性に会った…。
「朝3時から一人で(泥の)掃除。…ボランティアの人頼んだってすぐ来てくれんやろ…。自分でするしか仕方ない…」
たとえボランティアが来たとしても午後2時までの日帰り作業がほとんどだ。宿泊施設が不足しているから…。
町には今も地震で倒壊したままの家屋やビルが目立つ。被災した町の人は瓦礫を見るたびに“あの日”を思い出し「もう見たくない」という。
だが公費による解体・撤去は一向に進まない。送れている理由を業者に尋ねた。
関西から来ている解体業者
「能登に来る業者が後ろに控えている状態で…。まず宿泊施設がないことによって(能登入りを)止めている。こっちに入れないっていう…」
自治体の担当者に話を聞いた。彼自身も自宅が半壊し、身を寄せた兄の家は豪雨による浸水で1階は泥だらけだという。
輪島市災害対策本部広報 山本利治氏
「関係者が宿泊できる施設がもっとあった方が確実に復興は早く進むと考えています。やはり無償で泊まれる、例えばプレハブの仮設宿泊施設を、国の方から支援していただくというのは非常に市としては助かります」
地域防災に詳しい金沢大学の青木准教授によれば、公費解体には所有者全員の許可が必要なため集合住宅などは手続きが進まないという。さらに高齢化率約49%という地域事情うもあるという。さらに…。
金沢大学 青木賢人 准教授
「能登を離れて広域避難している方は、能登に戻らないと手続きが進まないといった行政的な難しさみたいなものがあって公費解体が進まない…」
被災者に政治に望むことを聞くと、自宅が全壊した87歳の男性は「新築するにしても消費税が大変なんだよ」と言った。家を建て直せば2000万円以上かかるが、こんな時に1割の消費税は厳しいと…。
同様に自宅が全壊した86歳の男性は、根本的なことを訴えた。
「“災害の起きない日本の国土”を作ってほしい。今度はどこで起こるかわからない。早く予防っていうか…。僕らみたいなことを他の国民に味わってほしくない」
また別の男性はこう言った…。
自宅が全壊した漁師(54)
「自分の党や派閥とかに力入れとるんじゃなくてね、やっぱ国民に力入れてくれんと…。お前らの派閥なんてどうだっていいよ。自民党だって民主党だって関係ねぇ、俺に言わせれば…。お前ら喧嘩しとらんと何で(被災地のために)手を組まんのかって話よ」
悲痛な声をスタジオで聞いた野田代表は…。
立憲民主党 野田佳彦代表
「弱っている人困っている人に寄り添うのが政治の原点だと思っている(中略)今回緊急災害対策をまとめました。そこに今(取材で)ご指摘されたことを改善する中身を入れています。これをしっかりと補正予算の修正協議に乗せて与党に飲んでもらおうと思う…」
「“輪島捨てられたな”って…」
能登の復旧が進まないひとつの要因として、大阪公立大学の菅野准教授は罹災証明書や公費解体の手続きを行っている自治体の職員自身もまた被災者であることがある。国や周りの自治体が業務を肩代わりするなどの制度設計が必要だと話す。
番組では、能登の被災者と野田代表との対話を試みた。現場の声に野田代表はどう応えるのだろうか?
野田代表と話したかったというのは、6月から1DKの仮設住宅に母親と暮らす松門信親さん。83歳の母は自宅では介護ベッドを使っていたが、仮設住宅の大きさでは置くことができず段ボールベッドに寝ていた。実は松門さんも半壊した自宅の公費解体を待つ一人だ。
輪島市で仮設住宅に住む 松門信親さん(50)
「公費解体の遅れはとても感じています。期限が3月まで伸びたんで、どうしようか悩んでます。(―――野田さんに言いたいことは?)与党野党手を組んで(能登のための)補正予算組んでほしいんですよ」
野田佳彦代表
「はい。それはもうしっかりと…」
自民王国だったこの地でも今回の選挙では立憲民主党の候補が圧勝した。松門さんも立憲に一票を投じた。それだけに期待は大きい。
松門さん
「豪雨の被害がかなり深刻やった。そこを見て補正予算つけていただきたい」
野田代表
「しっかりとつけたいと…。今まで予備費の対応で何に使ったかわかんなかった。たとえは岸田総理が現地に行くと1000万円予備費がつくとか…、これから先に明るい未来が立てられるかわかんないままだった」
能登半藤地震に際して政府は補正予算を組まずに7回にわたる予備費で対応してきた。この対応が復旧の遅れに関係していると野田氏は考えていた。
野田代表
「阪神淡路大震災の時は1995年1月17日発生でしょ。で2月の中旬には補正予算を閣議決定していた。28日には成立してる。東日本大震災の時は私財務大臣で(補正予算と推すまで)1か月ですよ。熊本地震も1か月。2か月かかったのは中越地震だけ。なんで(能登は)7回も予備費で…」
松門さん
「豪雨被害が9月にあった。自民党が10月に解散した。選挙どころじゃなかったんですよ。市民は“輪島捨てられたな”って…」
野田代表
「私も現地に行って、輪島だけでも土砂災害のところがいっぱい…。道路も40か所くらい寸断されて…。これで選挙って、いくら何でもないだろって…。東日本大震災の時、県議選を半年ずらした。ああいう措置はできたと私は思う。自治体の職員も被災者。そこに選挙の実務が加わってしまって非常にオーバーワークだった…」
松門さん
「この仮設住宅の人もほどんど自宅の再建はできないと思う。坪単価が上がって、家を建てるには3000万4000万かかる。僕も母が亡くなったらもしかしたら輪島離れるかも…。僕の友達も20人くらい、家もなくなり仕事もなくなって輪島を出て行った。行政には色んな面で支援してもらいたい」
野田代表
「2000万の家建てるのに消費税10%で200万でしょ。これについては消費税かけないとか、柔軟に対応できると私は思ってる。私は消費税固そうに思われてるけどこういう時には減免をする…」
災害対応こそ政治の出番だ。だが自民党は支援より選挙を選んだ。結果は当然の報いだった。後藤謙次氏があるエピソードを披露してくれた。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「石破さん、総理大臣になった直後に能登へ行きました。あの時ご本人は“生活が大変だろうからせめて温かいものを食べさせたいからキッチンカーを出したい。それと移動トイレもすぐ出したい”と言って能登に行った。でもその後なんの動きもない。どうしちゃったのって石破さんに聞いたら“官僚機構が動いてくれないんだ”って…。そこは総理大臣権限でバーンってやればって言ったんですが、システム的に硬直化していて目詰まりしてるんだなぁ…って。これを見直すのは政治家の心ですよ。心さえあれば何でもできる。それが足りないんだと思う」
(BS-TBS『報道1930』11月11日放送より)
11/18 14:00
TBS NEWS DIG