“年収103万円の壁”は撤廃? 8兆円の減収に…財源どうする? 自民・国民 政策協議開始へ【Nスタ解説】

自民党と国民民主の両党による政策協議が近く開始されることが決まりました。衆院選を通して国民民主党が強く訴えてきた年収「103万円の壁」の撤廃は実現するのでしょうか?

自民・国民 政策協議開始へ 「103万円の壁」撤廃できる?

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きょう午前、国会内で自民・国民民主両党の幹事長らが会談。

石破政権が取りまとめを目指す経済対策をはじめ、税制など政策の案件ごとに両党で協議していくことで合意しました。会談後、自民党の森山幹事長は…

自民党 森山裕 幹事長
「補正予算の関係もこれあり、来年度予算の問題も税制を含めて、できるだけそのことを政策に生かせるように協議していきましょうということで合意できました」

自民党は“少数与党”となったことを踏まえ、こうした政策協議を通じて、野党側に予算案の審議への協力を求めていく考えです。

しかし、国民民主党側はそう簡単に自民党側の狙いに乗る気はなさそうです。両党幹部の会談後、玉木代表は自身のXで早くもこうけん制します。

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国民・玉木代表が「X」に投稿(きょう午後)
「103万円の引き上げができなければ、我が党は予算にも法案にも賛成できません」

国民民主党は、衆院選でも「手取りを増やす」政策を実現すると訴え、なかでも「103万円の壁」引き上げに強いこだわりを見せてきました。

玉木代表のYouTubeより
「生きるコストはインフレで上がっている。であれば、基礎控除等の水準を引き上げなければならない」

選挙戦の最終日にも…

国民民主党 玉木雄一郎 代表
「特に私たちは103万の壁の問題を、これを今回、絶対やりたいと思ってる」

“手取り増”なら歓迎の声、パート勤務「もっと働ける」

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争点となる103万円の壁の引き上げ。朗報となるのは、パートで働く人たちです。

東京・墨田区にあるスーパーでは…

パート従業員
「年間を通して、労働時間の調整はしているので」

103万円を超すと税金がかかるため、泣く泣く勤務時間をセーブ。

パート従業員
「103万円の壁を上げてくれれば、もうちょっと働けるのになと思います」

人手不足で頭を悩ませる社長からも歓迎の声が…

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スーパーイズミ 五味衛 社長
「1時間でも仕事が多くできて頑張ってくれれば、うちの方も助かります」

さらに恩恵を受けるのは、パート勤務の人だけではありません。ほとんどの働く人の手取りが、数万円から数十万円増える可能性があるのです。

いまの税制では、年収が103万円を超えた場合、所得税などがかかります。一方、この“壁”を178万円まで引き上げると、「税金がかかる」部分が減るため、ほとんどの人の手取りが増えるのです。

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たとえば、年収300万円の独身の場合、年間およそ11万3000円の減税。夫婦片働きで年収700万円の場合、年間15万6000円ほど税金が減る計算です。

配偶者や子供のいる・いないなどに関わらず、納税をしている大半の人が何らかの恩恵を受けるのです。

「結構、変わるんじゃないですか。20万円変わるってなったら」

“手取り増”はバラマキか、財源7.6兆円はどこに?

ただ、壁の引き上げには懸念の声もあがっています。

自民党幹部
「高所得者優遇でバラマキだ」

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国民民主党が示した表を見ると、年収200万円の人は8万6000円の減税。一方、年収800万円の人は22万8000円の減税となり、年収が高い人ほど恩恵が大きいのです。

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また、財源にも課題が。政府の試算によると、178万円まで引き上げた場合、7兆6000億円ほど税収が減るだけに…

財務省関係者
「国庫に大変大きな穴が開く」

一方、玉木代表は財源について、こう自信をのぞかせます。

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国民民主党 玉木雄一郎 代表
「ある意味増えすぎた税収をお返しすると」

国民民主党との政策協議を担う自民党の小野寺政調会長は…

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自民党 小野寺五典 政調会長
「広く多くの意見を聞く中で、政策に反映するというのが選挙の1つの結果。国民の皆さんからの声だと思っていますので、謙虚にやっていきたい」

別の党幹部も「簡単な話ではないから、どこまで擦り合わせられるかだ」と漏らしていて、“少数与党”は予算成立に向けて苦渋の決断が続きそうです。

103万円→178万円で“減税効果”主張

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加藤シルビアキャスター:
今回の衆議院選挙以降、国民民主党は、日に日に存在感を増しています。

10月31日、玉木雄一郎代表は「案件ごとに自民党と協議を行っていくことで合意」と話しました。条件が整えば、9日以降、党首会談を行いたいとしています。

その国民民主党は「手取りを増やし、インフレに勝つ」と政策を打ち出し、「103万円の壁」の撤廃を主張しています。

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“103万円の壁”というのは、「給与所得控除55万円」と「基礎控除48万円」の合計103万円で、それを超えると、所得税が発生するというものです。

アルバイトやパートなど被扶養者は、103万円を超えると家族の扶養から外れ、結果として世帯年収が減り、働き損・働き控えにつながってしまいます。これが問題になっていました。

このようなアンケート結果があります。

野村総合研究所がパートで働く配偶者のいる女性を対象にアンケートを行ったところ、「年収の壁」を意識し就業調整を実施していると回答したのは、61.5%だったということです。

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この「103万円の壁」に、国民民主党の玉木代表は、基礎控除等を拡大させようと、103万円から178万円にしようとしています。結果として、減税効果につながるということです。

特徴として、働く全ての人に減税効果があるとしています。
※年収2500万円以上の人は対象外

玉木代表のSNSでは、年収(給与所得)が200万円の場合は8.6万円の減税効果、300万円の場合は11.3万円の減税効果、500万円の場合は13.2万円の減税効果、600万円の場合は15.2万円の減税効果、800万円の22.8万円の減税効果、1000万円の場合は22.8万円の減税効果があるとしています。

「減税効果はお金持ちほど大きい」 低所得者への“給付”も必要か

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TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
確かに減税はありますが、減税効果はお金持ちほど大きいんですよね。

極端に言うと、税金を払っていない方、低所得の方には恩恵がないこともあって、必ずしも全体に恩恵が行き渡るというわけではないので、「給付」も考えていかないと「金持ち優遇」という批判を受けかねない政策なんですよね。

ホラン千秋キャスター:
低所得者の方に対しての「給付」も考えられているんですか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
もちろんです。そこはセットでやらないと、収入の多い人だけというわけにいきませんから。

井上貴博キャスター:
デフレ時代に作った「103万円の壁」をインフレ時代に変えることは当然として、この政策が出てきたと思います。

そもそも、高所得者層の方が有利だということは、いま出てきたような印象を受けますが、当初からわかっていたわけじゃないですか。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
控除額の底が上がってきます。そこで高い所得の方の課税対象が減ることによって、減税になるということです。なので、理論的にはわかっていたことですよね。

井上キャスター:
例えば、基礎控除額に所得額階層ごとに差をつけられたりできないんですか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
現在は累進性で、4000万円以上の人は45%払うなどになっています。

その45%を下げれば、その分を下げれば税金は払わなくて済みます。ただ、そうすると、さらに「金持ち優遇だ」ということになっていくと思います。

世界では、累進がもう少し厳しくなっていて、高所得の方にはもう少し高い税率をかけようという傾向です。残念ながら、お金持ちの人には、もう少し税金を払ってもらう、ということです。

井上キャスター:
低所得層に給付などの考え方になるわけですか?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
給付をしないと、全体の生活水準は上がってこないことになります。そういう話し合いはこれからです。

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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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