世界初の「高層ビルメガソーラー」へ実証 次世代太陽電池で積水化学や東電 政府も支援

軽くて折り曲げ可能な次世代の「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」の実用化に向けた動きが本格化してきた。経済産業省は20日、世界で初めて高層ビルにPSCを設置し大規模な太陽光発電を行う積水化学工業などの計画を「グリーンイノベーション基金」の実証事業として採択した。PSCは日本発だが、中国などの企業が量産化の動きを強める。日本は官民が連携して開発を加速し世界で主導権を握りたい考えだ。

世界初のPSCの「高層ビルメガソーラー」は、東京都千代田区で令和10年度に完成を予定する地上46階建ての「サウスタワー」で計画が進む。サウスタワーは東京電力ホールディングス(HD)などが建設し、積水化学が開発したPSCを採用。発電能力はビル全体で1000キロワット超を見込む。

PSCはビル各階の間に設ける防火区画に置く。区画の外壁をガラスにして太陽光が入るようにし、内部にPSCを設置する仕組みを想定する。従来のシリコン型は重すぎたり、更新コストが高すぎたりするため高層ビルには不向きだったが、PSCならこうした課題を克服できるという。

実証事業としてはこのほか、工場や体育館など耐荷重の低い屋根への設置や量産技術の開発も進める。事業規模は6~10年度で183億円で、経産省はこのうち125億円を支援する。

国内ではシリコン型の設置に適した平地は限られており、PSCは再生可能エネルギー導入拡大の切り札として期待されている。ただ、日本で生まれたにも関わらず最近は中国や欧米の企業の量産化や高性能化の動きが目立ってきている。

日本政府はPSCの開発を加速するため、補助金に加え、官民協議会を設置して供給網の構築なども急いでいる。斎藤健経産相は20日の記者会見で「技術開発から社会実装まで切れ目なく支援を行い、世界をリードしていく」と強調した。

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