「首相候補を振るい落とす高い壁」自民党総裁選、出馬には20人の推薦人が必要

自民党総裁選に出馬するには、国会議員20人の推薦が必要となる。候補の乱立防止が狙いだ。告示後には各陣営の名簿が公開され、推した候補が敗れれば新執行部から非主流派扱いされかねないことから、必要人数を集めるハードルは高いとされる。しかし、今回は派閥の締め付けが機能しないこともあって20人をそろえるケースが続出し、過去最多の9人が立候補を届け出た。

過去は「50人」も

推薦人制度は昭和30年の結党当初はなく、翌31年の第1回総裁選は推薦人なしで出馬できた。その後、候補の乱立が目立つようになり、47年の総裁選から、推薦人10人が必要な立候補制となった。推薦人の条件は53年の総裁選で20人、57年には50人へと引き上げられた。大派閥が推したり複数の派閥が支援したりしなければ、出馬は事実上難しい状態だった。

リクルート事件などで党勢が衰退したともあり、「開かれた総裁選」を目指して平成元年の総裁選から推薦人は20人に緩和され、海部俊樹、林義郎、石原慎太郎各氏の争いを海部氏が制した。その後、推薦人は20~30人で推移したものの、14年からは現行の20人が定着している。

自民党が下野した21年には、所属国会議員の激減も受け、総裁選に出馬しやすいよう、推薦人を10人に下げる案も検討された。しかし「20人くらい口説き落とせない人物は首相になる資格がない」(閣僚経験者)という反対論が多く、改革案は実現しなかった。

派閥解消で集めやすく

20人の推薦人制度は「首相候補を振るい落とす高い壁」(党中堅)として機能し、これまで1回当たりの出馬人数は最大でも5人にとどまってきた。しかし今回の総裁選は、麻生派(志公会)以外のすべての派閥が解散を決めた中で行われ、特定の実力者に断らずに行動する議員が続出。同一県同士や衆院初当選同期など、従来にない枠組みで推薦人を集め、スタートラインに立つ候補が目立っている。

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