加藤勝信氏、回り道でたどり着いた総裁選 安倍政権で飛躍、拉致問題に熱心

10日、自民党総裁選への出馬を表明した加藤勝信氏は官房長官や副長官を計4年務め、官邸の運営に精通する。社会保障のエキスパートで、北朝鮮による日本人拉致問題に関しては担当相を長く経験し、総裁選候補の中で最も熱心に取り組んできたといえる。

大蔵(財務)官僚出身で政権の要職を歴任し、政治家のエリート街道を歩んだように見えるが、遠回りの政治家人生だった。

岡山県を地盤とする自民の加藤六月元農林水産相に婿入りし、同氏の秘書を務めた。しかし六月氏は政争の末に自民を離党する運命をたどり、加藤勝信氏は平成10年参院選に無所属で挑み、敗北した。

12年衆院選を前に、義父・六月氏の地元のライバルだった橋本龍太郎元首相の仲介で自民入りしたが、地盤の岡山5区で公認を得られず、比例中国ブロック単独で出馬。名簿順7位で落選した。ようやく初当選できたのは15年だった。

平成24年、安倍晋三政権で首相側近役の官房副長官に起用されたことが飛躍の契機になった。六月氏が安倍氏の父・晋太郎元外相が盟友関係で、家族ぐるみの付き合いがあった。

高い実務能力やアピールせずに仕事をこなす姿勢を安倍氏に買われ、初代1億総活躍担当相や厚生労働相、党総務会長など次々と要職に引き立てられた。

ただ、仕事ができるだけでは総裁の座に届かない。「選挙の顔」の役割が求められるからだ。知名度の低さが最大の課題となる。(田中一世)

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