電気代、月最大1040円の負担軽減 猛暑の8月は実感薄く? 延長は「次の首相の判断」

政府は3日、電気やガス、ガソリンなどの価格を抑える補助金の財源に、今年度の物価高騰対策の予備費から9891億円を支出すると閣議決定した。電気、ガス料金の補助金は8~10月使用分が対象で、東京電力などの管内の標準家庭では最大月1040円の負担軽減となる。エアコンが使われる残暑の時期や秋の行楽シーズンに、家計への支援を継続する。

原発稼働の関電は東電より安く

家庭向けの電気料金については、8、9月で1キロワット時当たり4円、10月で2・5円を補助する。東電や関西電力の標準家庭(月間使用量260キロワット時)では、8、9月は1040円、10月は650円の負担軽減となる。

この結果、8、9月は東電の電気料金が7千円台後半、関電は6千円台後半となる。関電の電気料金が東電よりも安く抑えられているのは発電コストが安い原発が稼働している影響が大きい。

都市ガスは8、9月の補助額が1立方メートル当たり17・5円、10月は10円。東京ガス管内の標準家庭(月間使用量30立方メートル)で8、9月は525円、10月は300円安くなる。ガソリンなど燃油補助は年内に限り続ける。

1兆円の枠、ほぼ使い切る

電気、ガス料金の補助は5月で一度終了したが、夏の猛暑でエアコンの使用が増えるなどの事態が想定されたことから、8~10月の負担を軽減するため再開した。ただ、家計が負担軽減を実感できるかには疑問符も付く。第一生命経済研究所の新家義貴氏は「猛暑が続いた8月は特にエアコンの使用量が増え、電気料金が高額になるケースもあったとみられる」と分析する。

財政負担も大きい。今回の補助で、物価高騰対策の予備費として設けた1兆円の枠はほぼ使い切る。鈴木俊一財務相は3日の記者会見で、財政負担に加え脱炭素化の必要性などに触れ「いつまでも続けるべき政策ではない」との考えを示した。

政権浮揚の思惑も

それでも、冬場のエアコン使用の増加や灯油需要の拡大をにらみ、延長の議論が浮上する可能性を指摘する声は多い。今回の補助は岸田文雄首相が6月の記者会見で表明したが、政権浮揚の思惑も取り沙汰された。

新家氏は「延長するか終了するかは次の首相の判断だ。補助金は止めるのが既定路線だが、一定の効果はあるため、冬場も必要だと考えるかもしれない」と話した。(中村智隆)

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