東京都知事選、熱帯びぬエネルギー議論 デジタル化で需要増 原発含め「国動かす議論を」

天然資源に乏しい国にあって、エネルギー大消費地となっている東京。しかし、都知事選(7日投開票)では、エネルギー問題を正面から取り上げる公約や街頭での訴えはあまり聞こえてこない。デジタル化の急激な進展により首都の電力需要の上昇が予想される中、原発の是非も踏まえた積極的な議論を求める声がある。

告示前日の6月19日に開かれた日本記者クラブ主催の共同記者会見で、電力需要増を踏まえた原発利用の可否に関する質問があった。会見に臨んだ主要4候補のうち、無所属現職の小池百合子氏(71)は「安全性の確保にさまざまな手続きが行われている」と利用を否定しないまでも、再生可能エネルギーなどの積極活用に軸足を置く姿勢を見せた。

いずれも無所属新人で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)は「現状イエス。日本の科学者を信じている」と述べ、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は「原発が危ないというのは、日本に仕掛けられている情報戦だ」と利用には肯定的だった。

一方、前参院議員の蓮舫氏(56)は「イエス・ノーで答えられる問題ではない」とし、候補者ごとに立場は割れる。

ただ、選挙戦に入り街頭で耳を傾けても、エネルギー政策をめぐる主張はほとんど聞こえてこない。各候補者が公約の中で必ず触れるデジタルの積極活用に欠かせないのが、電力の安定供給であるにもかかわらずだ。

デジタル活用の基盤となるデータセンター(DC)の国内立地状況を面積で比べると、関東地方は6割を占める。生成AI(人工知能)などが普及する中、これまでになくDCの必要性は高まっており、今後も東京圏での立地は進むとされる。

そんなDCが抱える課題の一つは、稼働に大きな電力を要すること。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が今年1月に発表したDCと半導体工場の新増設に伴う国内の電力需要は、今後10年で10倍以上となることが予想されている。

都はDC事業者に特化した省エネ事例集を公開するなど、急速なデジタル化による電力の大量需要を見越した対応を始めている。「エネルギー消費地の責任として、再生可能エネルギーへの転換などを積極的に行う必要がある」(都幹部)との立場だ。

とはいえ、電力関係者からは「国土を踏まえると、日本で再エネはエネルギー供給の主力にはなり得ない」との指摘もある。この関係者は「首都の責任として、都知事には今後のエネルギー政策をどう進めていくべきなのかを打ち出してもらい、国を動かしてほしい」と話し、原発の可否も含めた積極的な議論を期待している。(大泉晋之助)

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